90話_ ページ46
『その赤髪のお姫様には、城なんかよりふさわしい場所があるんだよね』
少年は、白雪を探す理由をそう言ったという。
「白雪、またその髪のせいで何かに巻き込まれてるんじゃないのか?」
口調とともに真剣な目をする巳早に白雪は言葉に詰まる。シンと静まり返った応接間の中で視線を交わすゼンと白雪を見つめながら、Aはその目を細めていた。
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「それで?Aはどうして来たんだ?」
巳早が退出し、各々が思い思い考える中、ゼンがAへと顔を向ける。
「……ん?言ってなかったか?」
「巳早がどうのとかいう建前はいい。兄上補佐の立場にいるお前に、そう自由な時間があるとは思えんからな」
「…あぁ、まぁ、そうだな」
イマイチ反応の鈍いAをゼンは眉をひそめてみていた。
その視線に気付かないAは、元の身分証も持っている身であるから、厳密に言うと違うのだが、そんなことを言うべきタイミングではないだろう。
そして、ここに来たのも言った通り巳早が来ているから、というだけでないのも事実だ。
などと考えながら、ミツヒデの横から、ゼンと白雪の正面に来ると、そっと跪くと胸元から出した紙をゼンへ差し出す。
「イザナ殿下より、白雪とゼン殿下へと書状を預かってきました」
「……A、これは」
軽く頭を下げたAに、ゼンの声がかかる。白雪と側近2人も息を飲んで俺たちを見ているのを感じる。
「さっきの話に関係があるとは考えにくい。が…悪いゼン、俺は、嫌な予感がする」
白雪もいるここで、言うべきことではないだろう。だが、さっきゼンが言ったように、自分から動きにくいのも確かなのだ。
床の光沢を見ながら、Aは感じる薄ら寒さにぐっと掌を握りしめた。
「いつだ」
「今晩7時頃、イザナの執務室に、と」
「わかった。……A、気にするな、とは言わんが、何かあった時は、お前も助けてくれるんだろう?」
緩んだゼンの声に、Aは顔を上げる。
光を受けてそっと笑うゼンに、Aは何も言わず顔を伏せた。瑠璃色の髪が表情を隠す。
「そう、だな」
「A?」
「そう、だ。ゼン、すまんなぁ」
「おい、A」
「ごめん、大丈夫」
ふっと息を吐き出して立ち上がると、Aはゼンの頭を撫でて笑う。薄紫の瞳は奥に巣食う怯えに気付かせないようにと細められていた。
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レイ(プロフ) - うさ丸さん» 更新遅くなってすみませんっ!コメントありがとうございます!なかなか続きをかけてないんですが、これは完結まで書きます!まだこういうふうに更新遅くなる日が続くと思いますがこれは書き続けたいと思っていますっ頑張りますっ!本当にありがとうございます!! (2016年5月9日 7時) (レス) id: af1a1b1ac0 (このIDを非表示/違反報告)
うさ丸 - え、消しちゃうんすか!? (2016年5月2日 22時) (レス) id: 93ddfd5243 (このIDを非表示/違反報告)
うさ丸 - 続き気になるっすね!更新頑張ってくださいっす! (2016年5月1日 21時) (レス) id: 93ddfd5243 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 御月刃さん» コメントもありがとうございます!自分なりにこれからも頑張ります!! (2015年9月13日 8時) (レス) id: af1a1b1ac0 (このIDを非表示/違反報告)
御月刃(プロフ) - 続編おめでとうございます!頑張ってください! (2015年9月12日 16時) (レス) id: 7136332561 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイ | 作成日時:2015年9月9日 12時