time sharing house～日常茶飯事～ (ページ10)

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　暑い時期だと汗が噴き出す距離を歩いて着いた先は小さめのお邸。
門構えは立派で、見えている範囲だけでも広いと分かるそこは。

　『日常茶飯事』なんて変わった名前の付けられたシェアハウス。
施設としても一風変わっていて、シェアハウスと銘打つものの中身は民泊に近いものがある。
ここへ常に住んでいるのはシェアハウスの管理者ひとりだけ。
あとの住人は登録制で、必要のある場合だけ食事や宿泊という形で利用しているところ。

　ま、登録者の中に数人いる学生はほぼ住んでいるに等しい。
学校のある平日はここに泊まっているほうがなにかと便利だからな。

　俺はここの登録者ではあるけど、ほとんど泊まることはない。
自分で料理はできないし、社員寮で食事は出ないから外食や店屋物に飽きればここへ食べに来る。
あとはこうやって金曜日の夜、お酒を持って来ては他の住人と飲み明かすくらい。

　登録者は男ばかりだけど、それが逆に居心地の良い空間を作り上げている。
誰も変な気を遣わないし、誰もが平等に接しているからギスギスした関係でもない。

　さて、今日は誰が居るのか。

　ほんとうはここを利用する際に使うべきアプリがあるのは知っているけど、俺は使ったことがない。
それを見れば誰が泊っているのか分かるけど、分かってしまうと面白くないから。

　でも登録料とは別に払う宿泊代や食事代を管理するのにもアプリは使われていて。
俺がなにもしていないのに、しっかり毎月請求が来るということは。
管理者が事後登録している、ってことなんだろう。

　金を払いたくないわけじゃないから、それは構わない。
むしろ、そうやってフォローしてくれていると知っているから好き勝手している部分がある。

　先週は来なかったから２週間ぶりになるシェアハウス。
門を潜って玄関を開けると―――

　「ただいま」