time sharing house～日常茶飯事～ (ページ11)

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　「おかえり・・・って薮かよ」

　「おいおい、冷たいな、光」

　キッチンに立ったまま出迎えてくれたのは、ここの管理者でもある光。
おかえり、と言った声はやさしかったのに顔を上げて俺を確認した途端に冷たく下がる。

　誰にでもやさしく接している光だけど。
俺に対してだけ、冷たいというか素っ気ない。
昔からの知り合いだから、そうさせるのかもしれないけど。

　良く言えば、遠慮がないだけだ。

　「連絡もせずに来て飯集られる身にもなれ」

　どうせ酒とツマミしか持って来てないだろ。
いつも同じことを繰り返しているから、俺の行動や持参物はしっかり読まれている。
だったら連絡なくても来ること自体分かっているだろ、と言ってはいけない。
言ってしまえば確実に飯に有り付けなくなる。

　来ないことも多々あるのに来るか来ないか分からない人間のために無駄な食材は用意しない、なんて。
きっぱりバッサリ言われてしまって終わりだ。

　光の言うことは正しいし、ここの決まりをひとつも守っていない俺がなにかを言えた立場ではないから。
ここは黙ってやり過ごすに限る。
見る限り料理を開始したところだから、食材に余裕があれば俺の分も用意してくれるはずだ。

　「やけに静かだけど」

　「ああ、今日は誰も居ないから」

　しん、と静まり返っているリビング。
テレビが点いていないことはよくあるけど、ソファーに誰も座っていないことは珍しい。
大抵ここにほぼ住んでいる中学生のふたりがリビングのローテーブルで宿題をしているのだが。

　「誰も？」

　「そ。ふたりは今日実家に帰って戻って来ない。あとはまだ学校とバイトと仕事」

　だから誰も晩酌に付き合う人間は居ないよ。
学生組が帰ってきても未成年だからね。
残念でした。

　調理する手を休めることなく、光はそう言った。