time sharing house～日常茶飯事～ (ページ43)

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　専門学校生になってから、初めて。
ううん、なる前か。
高校のとき顔見知り程度だった男に、告白されたことがある。
驚きはしたけど、気持ち悪いとは思わなかった。
そもそも偏見もないし、ただ自分がそういう対象になると思っていなかっただけ。

　けど、自分で言うのもなんだけど。
俺は童顔だし、身長も低いから実年齢より若く見られがちで。
性格も子どもっぽいから、庇護欲を掻き立てられるとか言われたこともある。

　で、なにが言いたいかっていうと。
そういう――同性を好きになる人に、好かれやすいみたい。
というのも、俺に告白してきた奴から聞いて知った話なんだけどさ。

　だから、ちゃんの苦労も分かる。
分かってあげられるし、助けてもあげられる。
話を聞いて、心を軽くしてあげることはできるけど―――

　根本的に違うのは、“俺を好む男”と“ちゃんを好む男”のタイプ。
俺のほうはああいうねちっこい、しつこい男はいないんだよ不思議と。

　「それに、さ」

　ホームへ入ってきた電車に乗り込み、反対側のドアまで進んで寄り掛かる。
座れないほど混んではいないけど、いまの状態のちゃんは座りたがらないから。
それに十数分ほど乗っているだけだし、立っていても平気だ。

　「好きな人に好かれないと、全然意味ないから」

　ドアの外、流れ始めた景色を見ながら零すちゃん。
その憂いを帯びた表情はすごくきれいで、男が――女もだけど――寄ってくるのは分かる。
そういう感情をちゃんに対して持たない俺でも、どきりとしてしまうから。

　「ほんとにね」

　ちゃんには好きな人がいるんだろうな、っていうのは薄々感付いていたけど。
この発言を聞いて、確信に変わった。
その相手は、身近な人間なんだろうっていうことも。

　その恋を、叶わないと諦めていることさえも。

　モテなくなっていいから、好きな人から好かれたい。
贅沢な悩みって言われるかもだけど、その気持ちは痛いほど分かるよ。
あのハウスに登録しているみんなは――薮ちゃんはなさそうだけど、その難しさを嫌ってほど身に染みて理解しているだろうから。