time sharing house～日常茶飯事～ (ページ42)

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　ちゃんの案内してくれた洋食屋さんは、学生が多く訪れるってこともあって懐にやさしいお値段だった。
なのに量は充分すぎるほどあるし、味も最高。
これは定期的に通いたくなる。

　ハウスでひかの作ってくれるオムライスも美味しいけど。
基本的に食事のメニューは全員共通で、好きなときに好きなものを食べられるわけじゃない。
そりゃ、自分でキッチン借りて作ればいいだけの話なんだろうけど。
そう簡単でもないから、実行に移せないだけで。

　ごちそうさまでした、と声を掛けて洋食屋さんを出る。
外はまだ暑いけど、このあとはハウスへ帰るだけ。
なるべく影になっているところを歩いて、大学の最寄り駅へ。
少しだけひんやりした空気に汗が引くのを感じつつ、電車を待つ。

　「ね、大ちゃん」

　「ん？」

　「前にも言ったけど・・・みんなには言わないでね」

　うん、と頷きはするけど口には出さない。
だってもう俺はちゃんが秘密にしていてほしいことを、ハウスのみんなへ伝えている。
でもそれは、ちゃんを馬鹿にしているとかじゃなくて―――
その身の安全を考えるからこそ、言ったんだ。

　ちゃんはどうも、男にナンパされることを情けないと思っているみたい。
それを自分ひとりで断って、振り切れずに助けてもらうしかないことも。
力ずくで向かってこられると、恐怖で身が縮む思いをすることも。

　そんなの、当たり前なのにね。

　「モテるって憧れてたけど・・・あんまりいいものじゃないかも」

　「そうだよ」

　高校生の間までは、モテたいって思っていた。
かわいい彼女つくって、とかいろいろ考えていたものだけど。
誰がバレンタインに多くチョコ貰えるか、とかね。

　でも最近はその考えが変わってきた。
こうやって悩むちゃんを見ていることも、助けることもあるから。
モテるっていいことばかりじゃない、危険も孕んでいるって知ってしまった。

　俺だって、ないわけじゃない。
高校生までは学内でも元気印で知られていたから、女の子に告白されたことも、彼女がいたこともある。
男友達もいっぱいいて、充実した学生生活を送っていたって言えるけど。