・その2・ ページ3
ぱたん、とドアが閉まる。
その向こう側へ消えた、肩を落としたけいとを思うと少し不憫。
仕事に向かう前に俺とけいを見たかった、と零していて。
俺としても、そうしてあげたかったけど。
未だけいとに心を許す気のない、けい。
初対面のとき、俺がうっかりしていたためにそうなってしまって。
ごめん、と内心どちらにも謝る。
「けいと行った?」
「行ったよ」
じゃあちょっと遊んでからお昼寝しよう。
そう言うけいは、すごく無邪気だ。
かくれんぼだって、けいとを悲しませるとは思っていない。
ただ、遊びの一環だから。
けいとが必死になって探すのを、楽しんでいるだけなんだよね。
一時期保護されていた施設の職員に向けていたような悪意はないんだ。
だから俺も、けいを尊重しても味方はしない。
出てきてあげればいいのに、とは思ってもけいとに触らせてあげる気はない。
だって、それでけいを怒らせたくはないから。
怒るだけ、ならまだいい。
俺が謝って傍にいれば機嫌を直してくれるから。
けど、悲しそうに・・・泣きそうな顔をされるのだけは見たくないんだ。
「あれ?どうしてごはん置いてあるの?」
「今日はもしかしたら帰れないかも、ってけいと言ってたよ」
ふぅん、って興味なさそうに返事をしてごはんのほうへ・・・・・・って食べちゃダメだよ。
ついさっき、かくれんぼ前に食べたでしょ。
「ほら、けい。なにするの?」
「ん〜?ごろごろする」
それ遊びじゃないでしょ。
けいは昔からぎゅっとしてごろごろしているのが好きだから。
そうしているうちに大抵、眠っちゃうわけだけど。
「ん・・・ほら、けい」
おいで、と言わなくても腕を広げれば飛び込んでくるから。
ぎゅっと抱き締め、ラグの上へ転がる。
「ひかる・・・」
首筋に顔を埋めたけいが呼ぶから、そっと頭を撫でた。
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作者名:晶 | 作成日時:2018年7月23日 0時