夢 ページ32
その夜も夢を見た。父と兄と私。過去の記憶がループしていてこれは兄が死んだ後のこと、と冷静に判別することもできるようになった。
兄のお葬式は雨の日に執り行われ、まるで夢の中みたいに——夢なのだけれど、人も物も輪郭を失いずっとボヤけていた。
そんな中で1人その場に不相応な銀色の髪の毛だけが雨に濡れたのかキラキラとしていて、綺麗だと思った。
元々、親族も少なくて深い関わりを持つ人もいなかった。形式ばった挨拶をされたとしてもやはり私は誰の顔も覚えてはいないし、相手とて義務で来ている。そんな人しかいないのだ。
焼かれて真っ白な小さな骨になったお兄ちゃんを見たら、涙が止まらなくなった。頭の中はぼんやりしてるのに心はずっと悲しみに暮れていた。Aは眉一つ動かさずに定まらない焦点で大きな涙の粒を溢していた。
目の前にスッと差し出されたハンカチ。使って、と一言。消え入るような声で「ありがとう」というと、少しだけ口角を上げて、そのまま去っていくのだ。
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かえで(プロフ) - おこめさん» えー!ありがとうございます!見ていてくださってたんですね。めちゃくちゃ嬉しいです…!今後ともよろしくお願いします! (2023年2月20日 23時) (レス) id: 8a349644e1 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - かえでさん初めまして!いつも楽しく拝読させていただいております!更新頑張ってください。陰ながら応援しております^ᴗ͈ˬᴗ͈^♡ (2023年2月20日 22時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえで | 作成日時:2023年2月8日 19時