さらば平穏な日々よ

生きて ページ19

ああ、ああ、なんでこんなゲームなんて、なんでこんな世界にきちゃったんだろうか。なんでこの人達がこんな選択をしなければならないんだろうか。何が正解かなんて分からなかった。

小さくなっていく親子の姿を見て、やはり引き留めずにはいられなかった。


「あの、あの！ごめんなさい私、あなたの覚悟もあなたの決断もこれっぽっちも分かってあげられてないのかも知れない！でも、」

でも、

「あなたに死なないで欲しい…」

死なないで欲しい。

「あなたもミナトのもお腹の赤ちゃんも私が守るから…だから、し、死ぬとかそういうの考えるの今はやめませんか？美味しいもの食べて、ゆっくり寝て、皆んなでお話とかして、それからじゃダメですか？明日にしませんか？そんで、明日もいっぱい笑って、そんでまた明後日って….それじゃ…ダメかなぁ…。」

張り裂けそうな心で叫ぶ。声が裏返る。涙でボヤけて2人の顔がよく見えない。支離滅裂で何言ってるのか、自分でもわからない。無責任な事言ってる。けど、ただ生きてて欲しいと思ってしまった。

「ありがとう」

「そんなことを言われたの初めてよ。…生きてていいんだって心の底から思えたわ。ミナトと2人で逃げるようにして生きてきたから、」

「でも、ごめんね。」

もう私が何を言っても彼女の決意は固いだろう。暗闇の中ひとりぽつんと私は動けずにいた。

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