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崖に着くと、遠くから見ていたのよりもずっと悲惨な状態だった。
草は焼け焦げ、岩は崩れ落ち、白骨化した死体がそこら中に転がっている。
あまりの光景に顕嵐は言葉を失った。
「お前はここにいろ。中には俺たちが入る」
「そんな…何もせずにただ見てろって言うのか?」
「入ったところで、一介の羊飼いに何ができる?お前の任務はドラゴンを倒すことじゃない。その顔に傷をつけることなく、生きて帰ることだ。いいな?」
隊長に続き、兵士たちは顕嵐を置いて洞窟の中へと入っていった。
待つこと数分…
「あぁ゛ーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
洞窟の中から兵士の叫び声が聞こえてきた。顕嵐は咄嗟に剣を取る。
再び大きな声がし、兵士の1人が這い出てくる。
身体の半分が燃えていた。
顕嵐は急いで駆け寄った。
出てきた兵士を岩陰まで運び、火を消してやる。
「他のみんなは?」
顕嵐が問いかけても、兵士は口をパクパクさせるだけで何も答えられない。
(くそっ…)
顕嵐は意を決して立ち上がった。
確かに自分はただの羊飼いだ。でもだからって、命を懸けて戦っている兵士たちを黙って見ていることはできない!
顕嵐が洞窟へ入ろうとしたそのとき…
『ぐぁーーーーーーーーーーーーーーーー』
ドラゴンが勢い良く飛び出した。
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作者名:千織 | 作成日時:2017年7月17日 10時