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顕嵐side
アパートの庭を抜け近くの公園に入る。じんは辺りに誰もいないのを確認し、口を開いた。
神「お前、一体何のつもりだよ?」
顕「別に何のつもりも何もないけど」
神「あのなぁ…」
じんが大きく溜息をつく。
顕「俺が気になる?」
神「ああ、気になるよ。お前今、楓嬢の家にいるんだよな?今夜お前がここにいること、彼女は知ってんの?」
顕「それは…」
神「知るわけないか。そりゃそうだ…でも、Aは全部知ってる。そんなの不公平じゃないか?向こうは何も知らず、お前を側に置いておけるのに、Aは彼女に遠慮して、1人で我慢してる。どうしてそんな状況になった?」
俺は何も言い返せなかった。だってどう考えたって俺のせいだから。
楓のこともはっきりしないで、のこのこAの家に上がり込むなんて、最低にもほどがある。
じんが怒るのも当然だ。
神「それで?これからどうすんの?」
顕「………楓とは、別れようと思ってる」
俺は掠れ声で呟いた。
じんが驚いたように目を見開く。
目を閉じて頭を整理するじんが言葉を発するのを
黙って待った。
神「……Aを選ぶんだな」
顕「選ぶと言うより…元々Aしかいないんだよ。前にAには言ったけど、目覚めてからずっと、違和感しかないんだ。町中何を見ても覚えがない。記憶喪失だからって言われればそれまでだけど、なんか違う気がするんだ。だってたった1つだけ、違和感を感じないものがあるから」
神「それがAっていうわけか…」
顕「うん…はっきり覚えてるわけじゃないんだけど、心のどっか奥の方で、彼女を知ってる気がする。彼女が側にいるときだけは、余計なことは考えずにいられる。好きだって思ったんだ」
神「お前…そんな恥ずかしいことよく言えるな」
顕「恥ずかしくなんかないよ」
俺がそう言えば、じんはやれやれというように首を振る。
神「分かった。そこまではっきりした思いがあるなら、俺は何も言わない。でも、なるべく早くしてやってくれ。先伸ばしにすればするほど、残る傷も大きくなるから」
顕「うん…」
神「じゃあ戻るか」
顕「あっ、悪いんだけど先戻ってて」
神「ああ…じゃあ後で」
じんを見送り、近くのベンチに腰掛けながらこれからのことを考える。
顕「どうしたもんかな〜」
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作者名:千織 | 作成日時:2017年7月17日 10時