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「褒美にいいことを教えてやろう」
私たちに背を向け、鷹岡はキャリーケースの方へと向かう。
「あのウイルスで死んだ奴がどうなるか、スモッグの奴に画像を見せてもらったんだが、笑えるぜ。全身デキモノだらけ、顔面がブドウみたいに腫れあがってな」
キャリーケースを持ち上げ、起爆スイッチを掲げる鷹岡に嫌な予感が走った。
…そんな時にはもう遅い。
「見たいだろ？渚くん、Aちゃぁん」
「や、やめろーーーーーーッ！！！！」
治療薬が入っているキャリーケースを投げ飛ばした鷹岡。烏間先生の叫び声とほぼ同時に、私たちの目の前でキャリーケースは爆破された。
バラバラに割れているスーツケースや小瓶、薬が降り注ぐ。
チリ、と頬に痛みが走ったのは、ガラスの破片が掠ってしまったんだろう。そんなことを考える余裕もなかった。
『…そ、んな』
唯一の治療薬が、
これがなければもう、みんなは───…
「あははははははは！！そう！その顔が見たかった！！」
私を指差していたのか、渚を指差していたのか…そんなことは分からない。ただ、視界の端で鷹岡が高笑いしているのだけが理解できた。
「夏休みの観察日記にしたらどうだ？お友達の顔面がブドウみたいに化けていく様をよ！ははははははは！」
『─────ッ』
言葉が出なかった。
立ち上がろうとするけれど、正座をしていたせいで足が痺れ、ペタリとその場に座り込んでしまう。
「安心しな、潮田渚。お前にだけはウイルスを持ってない。なにせお前は今から…」
地面に座り込んだまま渚の方を振り返れば、彼は地面に置いてあった本物のナイフに手を伸ばしていた。
『なぎ、さ…？』
「……殺…してやる、」
ゆっくりと立ち上がった渚は、怒りの篭もった瞳で鷹岡を前にしていた。
「ククク……そうでなくちゃな」
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