第二十六夜 ページ32
「はい」
「先日、公子殿達と交わした会話の内容を覚えているか?」
「....公子?えっと...愛についての話ですか?」
また突拍子もない話題だなと記憶を巡らせる
「あぁ。それだ」
こくりと頷き肯定の意を示す
「あれから俺はずっと考えていた、だが考えるだけでは答えは出なかった」
「……」
彼女は黙って聞いている
「このような話を聞いたことがある、とある老人にその弟子がこう問うた
“師よ、あるものを好きであることと愛することでは何が違うのですか”と」
「違い…」
「師は言った、“もし、お前がその花が好きだったとしたら、きっとその花を手折り愛でるだろう。だが、お前がもしその花のことを愛したのならば
お前はきっとその花に水をやり慈しみ、育てるだろう”と」
何か思うことがあったのだろうか、潤んだ瞳を瞬かせながら鍾離の話の続きを待っていたAに向き合う
「俺は今まで、この気持ちがわからなかったが……今ではわかる気がする、この気持ちは後者のものであるのだと」
「………え?」
澄んだ双眸をこれ以上開かないのではないかと思うほど大きく見開き、大いに驚いたようにピシッと体を止めたA
「俺たちは、いや…俺は、甘えすぎていた。俺たちには時間があった……果てしない、終わりのないような時間が……」
「だがそれは俺たちに会話の機会を与えるだけで、己の気持ちを伝える誠意を忘れさせた」
何か言いたそうに彼女は口を開いたが、すぐに言葉を飲み込んだ
「ずっと逃げていたんだ、目の前のことから、明日がある…未来があると信じ込み永遠に近しい時に甘えていた」
「そんなことはない」と言ったような目で見つめてくる愛らしい幼子に「ふっ…」と笑みをこぼし制した
俺が言いたいことはまだ終わっていないのだ
「だが、それも今日で終わりだ」
そう、俺は今を見なければならない
今あることが数百年後に同じ姿をしているとは限らない
諸行無常、この世に変わらぬものはなし
いつかは俺も土に帰るのだ、それを今痛感している
「六千年間逃げてきた神はもういない、俺はお前に伝えなければならない」
永遠を生きようとした神はもういない、その瞬間その言葉は流れるように口から滑り出た
「愛している」
474人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らっか(プロフ) - 白鷹。さん» うわーー!!ありがとうございます!!長々とくどい話もありましたが....次作もよろしくお願いします!! (2022年2月26日 13時) (レス) id: 673fcfd1a8 (このIDを非表示/違反報告)
白鷹。(プロフ) - 完結おめでとうございます‼︎自分も色々考えてさせられて楽しかったです‼︎次回作も追わせて頂きます‼︎‼︎ (2022年2月26日 13時) (レス) @page36 id: aa069cf9f2 (このIDを非表示/違反報告)
らっか(プロフ) - はっかさん» あ"っ!!!!ありがとうございます...!!亀更新ですがどうぞよろしくお願いします!! (2022年2月7日 6時) (レス) id: 673fcfd1a8 (このIDを非表示/違反報告)
はっか(プロフ) - めっっっっちゃ好きです、、!!更新応援してます!!! (2022年2月5日 10時) (レス) @page20 id: 849b00c654 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:らっか | 作成日時:2022年1月9日 16時