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第九夜 ページ11

「…行くの?」


「A様が言われたことですが」



これは…少しだけ予想外だった


彼のことだから人混みは嫌うだろうから断ると思っていたのに



あまりにも真剣な目でそう言ってくるものだから、ふぅっと小さく息を吐いて彼に問うた





「そこまでして…私を帝君に会わせたいの?」



璃月ができて約三千七百年、そして私と帝君が新たに契約を交わし、それぞれ自分の役についてからも同じ時が経った



彼が凡人になろうとしたのはつい最近のことだが…それまでの間も共に旅をし、戦場を駆け抜けてきた頃比べては会う頻度も少なくなっていた



もう彼も、そろそろ自分のしたいように生きても良い頃なのではないだろうか

長い間私や民や他の仙人に縛られてきた契約の神に、束の間の自由を与えてやりたいと思っているのだ




「岩王帝君は…いえ、鐘離様は」


璃月港がある方向を向いて小さな仙人は再び口を開いた




「毎日のように聞いておられます、慶雲頂を眺めながら」




この言葉は再び私を驚かせた




「……そう」




あからさまに嬉しそうな自分の声に、懐かしい感情が溢れそうになる

この胸の辺りが暖かくなるような感覚を私は知っていた





「じゃあ、魈が私を鐘離のところに連れて行ってくれるの?」




長年会えていない、師であり、友であり、親であり、想い人である彼の元に






「我は岩王帝君と、A様に昔教わりました

“一旦契約を交わしたのなら契約で欲したものと同等またはそれ以上の見返りを相手に返せ”…と」



翡翠色の綺麗な瞳が私を捉える





「我は岩王帝君とA様に救われた夜叉…この恩は必ず返上しなければならぬ


それに…近頃のA様はなんだか寂しそうでしたから」





寂しい



「私が寂しい…??」



気づいていなかったのかと首を傾げる魈に私が問いかける



「そうか、寂しい…か」



流れる雲海が昔自分が泣いていた荒野に見えた




「そんな五千年以上前の感情、帝君と出会って忘れてしまったものです





私は寂しかったのですね」




胸のわだかまりが消えた

無性にあの、冷たくて、全てを包んでくるような掌で頭を撫でられたくなった







子供じみた欲求は、かつての感情を蘇らせることなど容易なことだった






「ありがとう、魈


私を鐘離のところへ連れて行って」






今度は私が幼き仙人の瞳をまっすぐ見つめた

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らっか(プロフ) - 白鷹。さん» うわーー!!ありがとうございます!!長々とくどい話もありましたが....次作もよろしくお願いします!! (2022年2月26日 13時) (レス) id: 673fcfd1a8 (このIDを非表示/違反報告)
白鷹。(プロフ) - 完結おめでとうございます‼︎自分も色々考えてさせられて楽しかったです‼︎次回作も追わせて頂きます‼︎‼︎ (2022年2月26日 13時) (レス) @page36 id: aa069cf9f2 (このIDを非表示/違反報告)
らっか(プロフ) - はっかさん» あ"っ!!!!ありがとうございます...!!亀更新ですがどうぞよろしくお願いします!! (2022年2月7日 6時) (レス) id: 673fcfd1a8 (このIDを非表示/違反報告)
はっか(プロフ) - めっっっっちゃ好きです、、!!更新応援してます!!! (2022年2月5日 10時) (レス) @page20 id: 849b00c654 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らっか | 作成日時:2022年1月9日 16時

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