【名探偵コナン】冷たい時雨は暖かくなるか。 (ページ10)

今日:21 hit、昨日:1 hit、合計:37,629 hit

８話ページ10

「キャロル」
「………」

それは、夢で。
その夢はあたしの組織時代を映していた。

「合っているかな?」
「誰?」

「新人だ」

そう言えば、ジンがにやにやしながら、言ってきたな。ああ、これは、

「俺はライだ」

「そう。あたしはキャロル」
「よろしくな」

こいつ……アケミと付き合ってなかったか?一緒にいたの、よく見てた。

「貴方、モロボシダイでしょ」
「……君とは初対面だと思っていたが」

「初対面。でも、アケミといるところよく見かけたから」

「ほー。明美と知り合いなのか」
「……まぁ」

女は少ないから、話すことは多かったかな。

「で、君は異国人か?」

「……そうなんじゃないの?」
「む?どういう事かな」

「自分のこと、知らないから」

と言うと、ライは黙った。
彼にとっては気まずい話なんだろう。

「それは……記憶喪失か?」
「……えと、違うと思う」

「ただ……覚えていても、無駄だと思ったから覚えてないと……思う」

そう言う性格だから。

「ふ、はははは!」
「……?」

何故か爆笑された。
でも、そんな彼にあたしは＿＿＿

◆

「……!」
目を開けると、目の前にはスバルの顔があって、驚いた。

寝ているのだろうか。いつも、目を閉じているから分からない。

疲れているのか?

「……また、寝ようかしら」

隙がありすぎだとあとでシェリーに怒られるだろうが、

一人でここに住んでいると言う、スバルの話を聞いてしまったら、勝手に帰るってのは罪悪感が湧くものだった。

そして、あたしはまた、眠ったのだった。

◆

沖矢(赤井)side

「………」

また、俺の膝の上で眠った彼女を見る。先程、彼女は寝言を言っていた。

＿＿＿ライ。

と、懐かしい組織時代のコードネームを呼んでいた。

キャロル……Aには、そのライと、諸星大と言う名しか教えていなかったからな。

ＦＢＩだと知ったら、どうするだろう。

「捜しても……ライや諸星はいないぞ。だから、諦めろ」

聞こえるはずもないAに言った。
ふっと、自嘲気味に笑みを漏らした。

「そして」

俺はAの髪の間に、指を通して、言う。

「俺を、赤井秀一を＿＿＿捜してくれ」