【stpr】彦星の裏切り 【赤】

３０話 【8月2日】 ページ32

この笑顔も嘘なのかな…




『うん、あと何時間かで終わるよ』




私が応えると莉犬くんは「そっか」とリビングへ歩いた




私もテーブルに戻り作業を再開した




ーーーーー
コトンッ…




疲れた…ちょっと休憩…




3時間程が作業し続けて流石に肩が痛い




今だけはペンを置いて、伸びしよ




『ん〜…!!』




手を上げて凝り固まった肩甲骨と肩を伸ばす




ギュ…




『へっ…!?』




急に脇の下から出てきた手




『莉犬くん、居たの…!?』




あのあとまた部屋に戻ったと思ってたのに…




莉犬くん「居たよ〜…でもAの邪魔する訳にはいかないから、良い子にして待ってたの」




首に莉犬くんの息が当たってくすぐったい




莉犬くんの手をポンポンとして『偉いね』と言った




莉犬くん「えへへっ…ねぇ、俺ね、今すごい嬉しいの」




『「嬉しい」？何で？』




莉犬くん「え!?分かんない!?」




莉犬くんはちょっと身体を離して、私の顔を覗いた




『えっと…』




莉犬くん「今日何月何日？」




『は…8月2日？』




莉犬くん「そう！8月2日!!」




それと、嬉しいのの何が関係してるの？




莉犬くん「会えてるんだよ…？」




『「会えてる」……』




莉犬くんは今度はソファーを降りて、正面から私を抱きしめた




莉犬くん「5年間…一年に一回しか会えなかったのに…今会えてるんだよ？Aの誕生日じゃ無いのに会えてる…嬉しいに決まってるじゃんっ…！」




莉犬くんの力が強くなる




『そうだね…私も嬉しいよ』




莉犬くんの顔は見えないけど笑ってくれてる気がした




ん…？待って…




私は莉犬くんからゆっくり離れて顔を見る




私まだ覚えてるよ、莉犬くん…さっき誰と話してたのかな…？




また良い波に流されそうだったけど、疑って信じてを繰り返しててもう頭は狂ってるの




だから一度疑問に思ったら…




『莉犬くん、ちょっと聞きたいんだけど』




確かめる事にするね




莉犬くん「何？」




『さっきお手洗い行く時に聞こえちゃったんだけど…誰と話してたの？』




莉犬くん「なんでもないよ？」




莉犬くんはまたソファーに座って、私を後ろから抱きしめた




そして頭をグリグリする




でも、誤魔化されないよ…




『浮気…………してない…？』




その一言で世界が止まったように何も聞こえなくなった




そして身体にあった重みが無くなった

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