ママが帰ってきた！？

No.14 ページ14

ーーーF sideーーー




運転中

ミラーで後ろのチャイルドシートに

座った陽月を見ると


お気に入りのヒヨコを持ったまま

膨れっ面






太｢はぁ............ひー、

パパなんかしたか？｣



陽｢................｣




太｢いつまでもそんな態度だと

パパ怒るよ？｣




陽｢................｣





会話もまともにしないまま

マンションに着いた






車から降りて




部屋の鍵を開ける




その間もずっと陽月の態度は悪かった







太｢陽月、こっちにきて｣




リビングのソファに座らせて


目線を合わせるために向かい合わせで
しゃがみこむ






なんで陽月が
こんな態度なのかもわからない




俺は仕事の疲れと

気持ちを分かってやらなきゃ

って焦りで

むしゃくしゃしてるのが自分でもわかる






太｢ひー、ちゃんとパパに話して？｣



陽｢........いや！｣



太｢なんで嫌なの？


話してる時はちゃんとこっち向けって｣




無理やり目線を合わせると

嫌がる陽月




陽｢いやっ！やー！....やめて！｣



バシッ




陽｢....あ........｣

バタバタ手を動かして嫌がる陽月の手が

俺の顔に当たった瞬間






1人で一生懸命やってきた

俺の細い細い....細すぎる糸が切れた




太｢いい加減にしろょｯ！｣




大きな声でビクッと揺れる陽月の肩と


みるみる溜まっていく涙






太｢........はぁ、｣




そんな怯える陽月を見ても

溜息しかでてこない








陽｢....みんな....ママなのにどうして？｣





やっと陽月の口から出た言葉は

理解のできない....いや、きっと

理解したくないような言葉だった






太｢....は？｣






陽｢みんなおむかえにくるのは

ママなのにどうしてひーだけパパなの？｣




太｢............それはｯ｣





陽｢ひーだってママがいいもんｯ！


ママにあわせて！

あいたいよーｯわぁーん｣




ついに泣き出した陽月に

かける言葉も抱きしめてやることも

なにもできない俺は



やっぱり父親失格だ....








陽月は勢いよく

自分の部屋に走って

バタンｯって大きな音を立てて閉じこもった









太｢俺だって............会いたいょ....ｯ｣





ポタンと手の甲に零れた涙は


誰のものでもなくて


自分のものだった

No.15→←No.13

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す