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13話 昔の思い出 ページ16

『そういうとこが、子供扱いだって言ったんだけど』



廊下を歩きながら呟く

部屋には、冨岡さんの言った通り布団がひいてあった

ボフッと枕に顔を埋めれば、太陽の匂いがして気持ち良かった


...これから、何をしようか

特にやりたいことがあるわけでもないし、やらなければいけないこともない

ただ、もう二度とクロロ達に会えないと思うと少しだけ寂しかった


懐かしいな、こんな風に眠れない夜は

クロロと一緒に話し込んだっけ


ゴミに座って、月を見ながら酒のんで

一晩中話してたこともあった

次の日の朝には、パクに二人で怒られて

ノブナガが助け船出してくれたりして

楽しかったなぁ、幸せだったんだよなぁ

...また、会いたいなぁ


ポロリと涙がこぼれた



『うっ、えぐっ...ひっく、うぇっ』



忘れようと思うのに、そう思えば思うほど胸が痛くて

余計に涙は止まらなくなって


冨岡さんに聞こえないように声を押し殺して

涙が枯れるまで泣き続けた


そして泣き終わった後

私は、そっと音をたてないようにして庭に出た

月が見たかったからだ


今、皆もどこかで月を見ているかな

私が死んだこと、少しは悲しがってくれてるかな


縁側にゴロンと寝転んだ



『楽しいとき、嬉しいときは

  それに合わせて笑いましょう

  幸せを掴めたときは

  その幸せを離さないように

  悲しいときは泣きましょう

  辛いときは休みましょう

  それらは全て普通のことです

  今はゆっくり眠りましょう』



昔、よく歌っていた歌を口ずさむ

この歌は皆のお気に入りだった

町の外れで男の人が歌っているのを聞いて覚えた

決して有名な人ではなかったんだろうがとても心に残った


ガタッ


後ろで音がしてビクリと肩を揺らす



「今のは、Aが歌っていたのか」

『そう、ですけど...すみません、起こしてしまいましたか?』

「いや

  A、泣いたのか」



慌てて起き上がると、冨岡さんは私の横に座った

いきなり図星をつかれて少し焦る


そんなにわかりやすかったのだろうか


冨岡さんの手が私の目の下を撫でた



「寂しくなったか」



何も答えない私を見て、また質問をする冨岡さん

微かに頷いてみせる

冨岡さんが、「そうか」とだけ言って月を見上げる


しばらく、私たちは何も話せないでいた



「お前の、Aの

  どんな話でも良い、聞かせてくれないか」


再び口を開くのは、冨岡さんの方が早かった

14話 それぞれの過去→←12話 ずるい



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セブンス・エイカン(プロフ) - へまとふぃりぃあさん» あはははは.....そうなんです、実はそうなんですよね。夢主ちゃんかなりヤバイですよね!!でも大丈夫、優しくなります。そうです優しくなるんです。(震え) (2020年10月23日 22時) (レス) id: b773bec88c (このIDを非表示/違反報告)
へまとふぃりぃあ - 私は気がついてしまいました…夢主の方が序盤の鬼よりも人を殺しているのでは と、言うことを (2020年10月23日 21時) (レス) id: a69079c5f6 (このIDを非表示/違反報告)
ブルーキャット(プロフ) - 作ってあるので入ってみてくださいパスワードは後で言います (2020年3月13日 8時) (レス) id: aed0ea54d9 (このIDを非表示/違反報告)
ブルーキャット(プロフ) - セブンス・エイカンさん» https://uranai.nosv.org/u.php/novel/Kh199809182/ (2020年3月13日 8時) (レス) id: aed0ea54d9 (このIDを非表示/違反報告)
ブルーキャット(プロフ) - セブンス・エイカンさん» はいそんな感じですえっとキャラクターでネズコちゃんも一緒にいるってことになってます本当は箱の中にいますけど夜しか出ない感じです (2020年3月13日 7時) (レス) id: aed0ea54d9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セブンス・エイカン | 作成日時:2019年9月10日 23時

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