蛇の上手な鳴かせ方【瀬名泉】

灯篭 ページ7

「え、うそだー。
こんな人が神様だなんてありえないですよぉ」


何かの冗談だと切り替えた。
神様とはもっとなんかこう…背後に後光が差していて菩薩のような優しい笑みを浮かべて天のお告げをしてくれたり、あと雲に乗ってたりとか…他にもきっと雲の間からこちらを見つめる菩薩頭みたいな、仏的な。…兎も角これは違う！こんなくせっ毛の神様でたまるか。


「…もっとマシな生贄が良かったんだけど。そんなに言うなら、俺が神様だって証明してあげようか」
「なんですか神様証明書があるんですか」

そんなものない、と言って私を洞穴の奥へと連れていく。神聖な洞穴というらしいが、確かに綺麗な空気が流れている。この自称蛇神が来てからそうだ、何故か心地のいい風が洞穴に吹いている。


「…ねえ、あんた名前は」

「A、ですけど…蛇神さんはなんていうんですか」
「俺のこと信じてるわけ？」
「いや、呼び方ないので私の中では蛇神(仮)みたいなものです」


そう言うとため息をついて「ムカつく」と言いながらも言葉を続けた。


「泉でいいよ。一応、それでも名は通ってるし」

背中を向けたまま「泉さん」はそう言った。
そして足を止めてこちらを振り向く。

泉さんの前には赤い鳥居と怪し気に仄かな光を灯した灯篭が揺らめいていた。美しくも怪しいその光に目を奪われていると、突然私の身体は宙に舞った。そして鳥居の先の柔らかい草の上に飛ばされる。衝撃こそなかったが、突然のことで頭が回らなかった。


「な、なんで急に身体が」

戸惑う私を押さえつけるように今度は泉さんが跨って手首を掴む。


「じゃあ、覚悟しなよ」




私の返答を待たず、泉さんは私にキスをした。

契約→←神様

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