ぬくもり。【灰谷蘭】

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「指、どーした？」









…指？…あ。

彼の視線を辿り、自分の指を見た。

硝子の破片で切った所。
傷口が開き、少し血が滲み。

透明な水が赤色を乗せ、流れて行く。









「絆創膏、あったかな。」









竜胆は部屋中を隈無(くまな)く探して。無くて。

「…大丈夫、直ぐ治る。」と。
赤色が床を汚す寸前、私は傷口を口に。

…不味い。美味しい訳、無いケド。









「見せて。」

「…うん。」









…思った以上に、深く切った…みたい。









「…え？」









彼が、私の指先に…キスを。

血を吸って。何度か口付けて。









「逃げんなよ。」

「血、止まった…。」


「だから？」

「…だから？だから、…。」









…彼は、悪戯(いたずら)に笑った。









「こーら。意地悪すんな♡」

「はいはい。早く服着て。」









「俺も風呂。」と、
今度は竜胆の姿を見送って。

私は、蘭の身体に在る稀(まれ)な刺青に釘付け。









「オソロイだね。」









…オソロイ？

私の首元に手を掛け、服を引っ張る。

胸元まで伸び切った服。
鎖骨の下に覗く青い痣。

痣は刺青と違うモノで。
嫌な記憶の象徴。…なのに、頬が熱い。









「ね？俺とオソロイ。」

「うん…オソロイ。」









…風邪の所為…かなぁ。









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