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昔話と俺っち ページ32

「大将は十五・六代目くらいの審神者なんだが__」



昔、もう何十年も前だ。

五代目の審神者は、俺の一人称が嫌いだと言い始めた。



「俺っちってなんか嫌い。ウザイからそれやめて?」



そう言われた。


最初は驚いたし、自分を否定されているみたいで、
辛かった。





そして運の悪いことに、六代目も同じことを言った。



そして六代目は、俺が薬や医療の知識を齧っているのも嫌だったらしい。








____ある日、二つの術をかけられた。



俺が俺っちと言う一人称を人前で使えないようにする術。


もうひとつは、俺が薬研を触れないように、薬を作れないようにする術。




どちらも審神者の立場がなければ解けないらしい。





悔しかった。


自分の個性を否定されて、それに対して対抗できなくて......。




その後来た審神者に解いてくれるよう頼んだが、頼みを聞きいれてくれる奴は少なく、聞き入れてくれた奴に限って、霊力が足りずに解けなかった。






















「____と、まあそういう事だ」




大将は、話の間中ずっと黙っていた。



何を思ったのだろうか。

大将は再び俺を抱きしめてきた。



「...............大、将?」



声をかけても何も帰ってこず、少し不安になった。









『.......今、解いてあげるね』



少ししてようやく、返事が返ってきた。

それと同時に、体に暖かい霊力が流れ込んできた。



ふわっと俺の前髪を揺らして、霊力は止まった。



『言って見て、薬研くん』



大将のその言葉に戸惑いながらも、口を開く。



「お........俺っち...............っ!?」

『言えたね、薬研くん!』



大将は、自分の事のように笑ってそう言った。

そして今度はぎゅっと抱きしめられた。

そっと俺っちも抱きしめ返すと、笑みが零れた。



「ありがとな、大将」



そういうと、一度止まったはずの涙が、また出てきてしまった。



『今まで辛かったね。もう、我慢しなくてもいいから。........薬だって好きに作っていいし、一人称も“俺っち”でいいよ』

「.....本当に、いいんだな?」

『私、俺っちな薬研の方が好きだよ』



そう言って笑った大将の顔は、雨上がりの青空のように澄み切っていた。

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陽香(プロフ) - 空波さん» ありがとうございます!正直ちゃんと清光のいい子さが伝わるかなと自分の表現力に自信が持てなかったのですが、伝わったようで良かったです。嬉しいコメントありがとうございます (2020年7月24日 7時) (レス) id: a10faff46c (このIDを非表示/違反報告)
空波 - とっても面白いです!!最後で清光いい子だなぁと感動してしまいました…! (2020年7月23日 12時) (レス) id: 24df3d328f (このIDを非表示/違反報告)
陽香(プロフ) - 良かったです!これからもどんどん出していくつもりなので、楽しんでください! (2020年5月12日 18時) (レス) id: a10faff46c (このIDを非表示/違反報告)
姫那(プロフ) - 推しの2人(兼さんと堀川くん)がでてきてうれしい! (2020年5月12日 18時) (レス) id: 02928c87bc (このIDを非表示/違反報告)
陽香(プロフ) - 八重乃 真鈴さん» 応援ありがとうございます!頑張ります! (2020年5月3日 8時) (レス) id: a10faff46c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:陽香 | 作成日時:2020年4月12日 10時

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