半妖少女と蒼い蝶

第８話 ページ9

Aside



中庭に出ると沢山の草花があり、その中に1本だけ大木が生えていた。
翠瓏さんはその大木に向かって叫んだ。




翠瓏｢おーい緑香ー！！仕事だぞー！！！｣




するとその大木から、白と青の袴を着た緑の髪の女の人が降りてきた。




緑香｢またあんたかい…くだらない理由で呼び出したんなら仕事に戻らせてもらうよ｣


翠瓏｢違えよ！また霞草の葉っぱ作って欲しいんだよ！｣


緑香｢あんた渡しすぎなんだよ｣


翠瓏｢まだ23枚くらいしか渡してねぇよ！｣


緑香｢はいはい、分かったからちょっと待っときな｣


翠瓏｢あとこいつのやつも作って欲しいんだけど｣


緑香｢この子かい？｣


翠瓏｢そうそう｣




緑香さんはゆっくりと私の頭に手をかざしながら、私の顔をみた。




緑香｢ほう…珍しいねあんた。半妖なのかい｣


『っ…はい』


緑香｢はは、そんなに緊張しなくてもいいよ｣



かざしていた手を戻し、翠瓏さんの方に向いた。



緑香｢ところでこの子の花は決まってるのかい？｣


翠瓏｢いや、まだだけど｣


緑香｢じゃああたしが決めてもいいかい？｣


青淋｢駄目だ。｣


翠瓏｢うわっ？！！お前何でここにいんだよ！｣




突然現れた青淋さんに驚く翠瓏さん。
それに対し緑香さんはさほど驚いてはいない。



緑香｢どうしたんだい坊や。ここはあんたの来る場所じゃないよ｣


青淋｢俺を童扱いするとは、迷惑な老嫗だ。｣


緑香｢あたしゃまだ若いよ。失礼な坊やだねぇ｣




少し苛立ったような目で緑香さんを睨む。
そんな青淋さんをちらりと見て緑香さんは木の上の方を見て、口を開いた。



緑香｢おーい、誰かあたしの煙管を投げてくれないかい｣



すると木の上から朱色の煙管が落ちてきた。
その煙管を受け取り、慣れた手つきで火をつけ吸い始めた。



緑香｢で、用がないなら帰りな青淋｣


青淋｢用がないとは言っていない。｣


緑香｢じゃあ何の用だい？早くしておくれ｣




青淋さんは私を指差し、迷いなく告げた。




青淋｢こいつの花を作って欲しい。花は姫檜扇〔ヒメヒオウギ〕だ。｣



少し目を細める緑香さん。
口角も少し上がっているように見えるのは気のせいか。



緑香｢姫檜扇ねぇ、坊やにしては中々センス良いじゃないか。色はどうする？｣


青淋｢白だ。｣


緑香｢ならお代は木霊で…と言いたいところだが、特別に今回はチャラでいいよ｣



そういって緑香さんは地に手をかざした。

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