【ヒプマイ】夜が輝いて見えたなら【入間銃兎】

8話 ページ8

その日の夜、いつものようにコンビニでバイトをしていた。

あのメロディが鳴り、いらっしゃいませ、と言いながらお客様の方を見ると、そこには入間さんがいた。

びっくりしながらも会釈すると、入間さんは微笑み返してくれた。

仕事場の帰り道にこのコンビニがあるのだろうか。

今このコンビニの中には入間さんしかお客さんがいないため、つい入間さんに目がいってしまう。

今日も全身をカッチリとスーツでまとめ、赤い手袋をはめている。上品な出で立ちだ。

入間さんはミネラルウォーターと缶のハイボールを手に取ってレジに向かってきた。

「お願いします。」

と言ってレジ台に商品を置く。

「ありがとうございます。」

入間さんって意外に缶のお酒とか飲むんだな。ワインとかすごく似合いそうだけど。

そんな余計なことを考えている間に入間さんから声を掛けられた。

「風上さんはいつもこんな夜中にここでお仕事を？」

「あっ、はい。お給料もいいので…。25歳にもなるのに恥ずかしい限りです。」

入間さんは、いえ、そんなことはないですよ。手を横に振って続けた。

「ですが夜中に女性1人で帰るのは危険ですので十分気をつけてくださいね。」

この前の人が良い例です。と困り眉で言った。

お会計が終わり、商品を袋に入れて手渡す。

「あの日以来お身体に不調はありませんか？」

「はい！なんともないです。あの時助けていただいたおかげです。本当にありがとうございました。」

それなら良かった、と人懐っこい笑みを浮かべて、それでは、と軽くお辞儀をして入間さんは店を出て行った。

入間さん、あの時の怖い目つきが印象的で少し苦手だったけど、案外良い人かも。

そういえば、あの時に助けてもらったお礼を入間さんたちにしないといけないな…。

ただ、私のようなヤクザのアジトを知っているような者が警察署に出向くのはいささか気が引けるので、何か簡単に食べられるものでも用意しておいて、入間さんに直接会ったときにすぐに渡せるようにしよう。

レジから離れ、商品整理と兼ねてお礼の品は何が良いだろうかと食品コーナーへ向かった。

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