【ヒプマイ】夜が輝いて見えたなら【入間銃兎】

17話 ページ17

運命の給料日。

コンビニバイトも終わり、昼ごはんも済ませた。後はお金を下ろしてルイに渡すだけだ。それだけでこの地獄のような生活に終止符を打つことができる。

何回も返済日は経験してきたが、これで最後となると緊張度が尋常ではない。やっと終わるという高揚感が私を縛って離さない。実際、バイトから帰ってからも興奮してあまり眠れなかった。

ふらふらとする体に鞭打って家を出た。

外は雨が降っていた。じめじめしていて少し不快だ。今週はずっと晴れだったのに今日に限ってこんな天気なんてなんだか不穏に感じる。

水溜りを踏まないように注意して歩いた。

銀行に寄ってお金を下ろす。こうやって人に渡すためにお金を下ろすのもこれで最後かと思うも、実感が湧かない。

ブランド街に差し掛かる。いつもは人がいっぱいで上品な賑わいを見せているが、今日は雨のせいか人が少ない。

唯一いるのはレースのついた傘を差した人や黒い傘の人ぐらいか。

その黒い傘の人は深く傘をさしていたが、私の2メートル先くらいでさっと傘を上げて顔が露わになった。

「あっ入間さん！こんにちは。」

「こんにちは、よく会いますね。風上さん。」

本当に最近よく会う。

入間さんは雨の日だというのにヘアセットが完璧だった。七三分けで誠実な印象を受けるが、いつもどこかこなれた感じがする。

「あれ、今日は風上さんお疲れですか？」

隈がありますよ。

そう言って私の傘の中に入って私の目の下をなぞった。いつもより距離が近いような気がする。

前のことがあるので触れられただけでも緊張する。

「い、いや大丈夫ですよ！昼夜逆転してるのでそのせいじゃないですかね？じゃ、私急いでいるので失礼します！すみません！」

そそくさとその場を離れる。

こんなところで心をかき乱されている場合ではない。さぁ、行かねば。

気をつけていたはずなのに何故か水溜りをバシャバシャ踏んでしまった。

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