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グルッペンside
恐ろしさに慄いた。
目の前の可憐な女は真っ直ぐに此方を見つめる。
自身の暗殺者として生きてきた道に一切の不信を抱かない瞳が、俺をまるでターゲットをスコープから覗くみたいに刺す。
気圧されそうになるのを隠してにやりと笑い、オスマンに資料を渡させた。
「これがお前の軍務だ。」
ぺらり、と紙を受け取り目を通すA。
目を見開いたのはおそらく、自身が前線だとは思っていなかったからだろう。
『_まあ、する事は予想どおりでしたけど、私は前線ですか』
「そうだな」
『__傷、付けられへんな』
ぼそり、と呟いたのを聞く。
コイツは自分の身がどんな事になろうと結果的に自分が楽しければ良いのだろうに。
だが俺達からすれば、傷は作らせたくない。傷の付いた女の価値は誰でも下がるからだ。
だから本心から背いたその正論を言ったのだろう。
『純粋に、なんで前線なんですか』
「前線でも戦えるだろう。それにお前は黙って見ているのは好かなそうだったからな」
『怪我でもしたら、他でもない貴方達が私に牙を向けませんか』
「____それは、自分の価値の殆どが容姿による物だと言いたいのか」
『事実じゃないですか』
「オスマン先生、これは無罪ですか?有罪ですか?」
「有罪ですね、ってことやろキスするで」
『逃げますけど、』
「よせ、逃げられたらまた幹部出撃せなあかんやん」
「ちぇ」
今度は、真っ直ぐ此方が見つめ返す。
表情は繕ってはいるが動揺の色を浮かべていた。
「お前の四肢がなくなろうが失明しようが、お前はうちの幹部だ」
『……』
隠そうともせずに、おもいっきり顔を顰めるAに笑う。
コイツの人間不信が治ればええのに、なんて思った。
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たい焼き - とっても面白かったです!オスマンがすっごい刺さりました!! (3月18日 18時) (レス) id: 5f87212f07 (このIDを非表示/違反報告)
暁 - あッ好き!!!!! (8月7日 16時) (レス) @page47 id: 1fc9dc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
Saklsaki(プロフ) - こんな胸に来る作品を作って頂き有難うございます。もう泣くかと思いました。月の下り良かったですよ。神作品でした。自分もこんな作品を作れるように頑張りたいと思いました。 (2021年8月19日 17時) (レス) id: 7893269b23 (このIDを非表示/違反報告)
夏目。(プロフ) - すきです。番外編待っとります (2020年10月4日 3時) (レス) id: c6ffa1b029 (このIDを非表示/違反報告)
漢字ノートが終わらない小学生 - めっっっっっっちゃ私の性癖にこう、 『グサッ』的な感じで刺さります!!!! (2020年8月18日 15時) (レス) id: abb7299221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:壱 | 作成日時:2019年12月19日 18時