【cs】No Smile, No Life【水鳥 リツ】

▼過去 ページ10

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　物心ついた時から、表情の乏しい少女だった。
　そこに理由などなく、ただ元々そうだったとしか言いようがなかった。それでも園児だった頃まではなんとかやっていけたものの、小学校に上がってからは酷く浮くようになってしまった。
　泣きも笑いもしない子。何を考えているか分からない子。そして、職人が丹精込めて作り上げた美しい人形のような、作り物のような美しさ。
　それは傍から見た人物を惹きつける反面、近くまで来た人物には言いようのない違和感と不気味さを植え付けることになってしまった。
　それでも少女は暫くそのことを気にしていなかった。元々他人の意見を流すだけの気丈さがあった。
　また、少女は話すことが好きだった。他人と他愛ない、くだらない笑い話をするのが好きだった。
　だからこそ、彼女の内面を知って親しくなった人物も何人かいた。表情はなくてもどうにかなる。その頃まで彼女はそう思っていた。

　中学に上がった頃だった。
　たまたま、知り合いの少ないクラスになってしまった彼女はそれでも気にせずに過ごしていた。
　そんな時、知らぬクラスメイトが数名の女子を連れながら声をかけてくる。「ずっと気になっていて」と言った彼女は、ハキハキとよく通る声で話すのが印象的だった。
　来る者拒まず、が信条だった少女は彼女とも他愛ない話をする。すると彼女はお気に召したのか、面白いねと笑いながら一言言い、始業のチャイムで帰って行った。
　それから、彼女とよく話す日々が続いた。
　そこまでは良かった。ただ一緒に過ごすうち、少女には悩みの種ができてしまった。


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