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鼠と名前 ページ4

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「あの、僕、中島敦です。中島敦。」




今更ですよね、とポリポリと頭をかきながらそういう少年に、彼女はまたにこりと笑って、



「私はA。A=ドストエフスカヤです。」



と答えた。

特に喋ることがなく、何秒かの沈黙が続くと、その沈黙を破ったのはAであった。


「はあ、それにしてもお腹が空きましたね。
私、日本に来てから1週間ほどがたったんですけど、食欲がなく元々あまり食べる質でもないこともあって、全くご飯を食べていないんです。」



はあ、と態とらしくため息を着くAに、敦が " それは倒れちゃいますよ !! " とオーバーなリアクションを取る。
Aの知り合いには、こんなにも大きな反応をくれる人が居ないため少し興味深く思っているようだ。



「あれ、そういえば、Aさんって露西亜の方ですよね、" 飛ばされた " って言っていましたけど、何があったんですか?」




興味深そうに敦が聞くと、Aはただ可笑しそうに、" いえ、大した事情では無いんですよ " と笑った。




「兄と探し物をしているんです。
日本にはその手がかりを探しに来ました。」


河川敷の向こう 、というのか、どこか遠くを見るようなその目には吸い込まれてしまいそうになる。
黒くて、力強い意思がそこにある、と敦は柄にもなくそう思った。



「へえ、大変ですね ... 。
手がかり、ですか、ここで会えたのも何かの縁ですし、僕でよければ手伝いますよ!」




ね!と少ない筋肉をわざとらしく作り、Aに笑いかける敦。
そんな敦を見て、Aはまた薄く笑って、




「それはとっても嬉しいのですが、もう手伝ってもらいましたし。手がかりも見つかったので、大丈夫です。」





と敦を見た。





" 手伝ってもらいましたし " という言葉に身に覚えがない敦は、"そうなんですか?それなら良い?んですけど" と曖昧に返事をする。

それをみて、またAが " はい " と笑った。


その笑みに、どんな思いが込められているかも知らずに。


.




( .. フェーヂャの言った通り、矢張り孤児院には追い出されて路頭に迷っていたみたい。
さすがフェーヂャだ、さすが私の兄。
任せてくださいね、任務はしっかりこなしますから。 )

鼠と男→←鼠と入水



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まがおちゃん - すきです (2019年6月29日 18時) (レス) id: 1eba992f2c (このIDを非表示/違反報告)
あめちゃん(プロフ) - 私と同じ誕生日です!←(そこはどうでもいいんだよ((殴)とっても面白いです!無理しない程度に頑張ってください! (2019年3月10日 0時) (レス) id: 598406d5d8 (このIDを非表示/違反報告)
文スト、とうらぶ好きの審神者夜霧様(プロフ) - 青谷さん» いえいえ!更新頑張ってください! (2019年2月15日 22時) (レス) id: aa64b13255 (このIDを非表示/違反報告)
青谷(プロフ) - 文スト、とうらぶ好きの審神者夜霧様さん» わ、そうなんですか、、!?教えてくださってありがとうございます<(_ _)> (2019年2月15日 17時) (レス) id: 5ce8256f2f (このIDを非表示/違反報告)
文スト、とうらぶ好きの審神者夜霧様 - 女性の場合「ドストエフスカヤ」ですね「ドストエフスキー」だと男性になっちゃいますよ (2019年2月15日 11時) (レス) id: aa64b13255 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青谷 | 作成日時:2019年2月15日 8時

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