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26話 ページ28

「Aさん、なんか楽しそうですね?」

バックミラー越しにひなと目が合い、そう?と含み笑いをする。

灰皿に灰を落とし、車内に蔓延する煙を窓を開けて外に解放した。

「ポアロ……俺が行った店な」

「はい」

「そこのウェイターがちょっと面白そうで。ジン待ってる間に知り合った子供とか」

「たった数分で人と親しくなるAさん、素敵です」

盲目的な評価に肩を竦め、素直に御礼を言っておく。

コナンとは親しくなれたかもしれない。しかし、ウェイターの場合は違うだろう。

店員と客のやり取りしかしていないし。
コナンは知り合いぽかったから、よく話してたけど。

何の気なしに車内を見渡して、はたと気づく。煙草を咥えたまま、声をかけた。

「かなはどうした?」

方向指示器を表示し、横から人が来ていないことを確認してから右折する。

そして、やっと返事が返ってくる。

「出かけてます」

「フーン、どこに?」

「さぁ、場所までは。でもすぐに戻るとか」

そっかと頷いて、外に目を向ける。目玉を痛める風に目を細めた。

かなが仔細を告げず、俺の迎えに来ないのは少しおかしい。

だいたい送迎はかなの役目だった。
かなは俺とひなに比べて運転が上手いから。

ひなも上手いが、他のことをしながら運転をするのは苦手とする。俺は車壊す。

……俺にも言えないこと、なんだろうか。

携帯を取り、耳に当てる。電話に気づいたひなが音楽の音量を下げた。

コール音だけが繰り返される。たぶん、あと3コールで留守電だなんだと流れるはず。

1、2、3――

『――はい』

携帯を通して聴こえた声に、眉を潜める。声に続いて荒い息がする。

「お出かけってのは喧嘩?」

『そうです』

ばつが悪そうに間を空けて、渋々答える。それに深く溜息を吐くと、尋ねた。

「どこと」

『……勝手なことしたのは謝ります、勘弁してください』

「かな」

『……はい』

「―――言えねーの?」

胸を圧迫されたような威圧感に息を詰める。喉を引くつかせ、吐息のような声が漏れる。

怯え、恐怖、後悔……色んな感情が渦巻いて整理が追い付けてない。

少しやり過ぎたかと反省するが、だからといってこのまま終わらせるわけにはいかない。

「言わないで、それは俺を護れてんのか」

『――』

「強いことと、護ることの意味を履き違えんなバーカ」

『なら、どういうことですか?』

縋るような情けない声に鼻を鳴らす。前を向いているひなの後頭部を見つめ、

「そいつの為になること」



『―――……FBIとです』

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作者名:暁の雨 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年4月20日 20時

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