25話 ページ27
おすすめと運んできたのは、ショートケーキだった。
ショートケーキといっても、俺が知っているのとは少し違う。ウェイターのアレンジを加えたものだとか。
この店のほとんどがウェイターの発想から作られたもので、コナンは美味しそうにケーキをペロリと平らげた。
「結局食べたね」
「さすがに持ってこられたら食べるよ」
と、呆れたような半眼になる。そして、ついでに頼んだアイスコーヒーを一口飲んだ。
その口許に付いている食べかすを指先で取り、舐める。
「うん、確かにうまい」
濃厚なソースと甘いクリームが合わさり、食べかすだったが味がちゃんと舌に広がった。
今度自分が注文してみようか。それとひなとかなにも。日頃のお礼とか言ったら、泣くだろうな。
「――」
「ん、どうしたの?」
「ぇ、あ、ううんなんでもない……けど……いや、なんでもないや」
どこか歯切れの悪い返事をして、顔を背ける。すると、彼の耳が赤く染まっていた。
それで急によそよそしくなった理由がわかった。
こんなに幼くても、しっかりと男なんだなぁ。でも俺も男なんだけどなぁ。
照れているのがやけにかわいくて、ニコニコとその様子を眺める。
「――?天羽さん、もしかして電話鳴ってる?」
「ん?あ、ほんとだ」
ふとこちらに顔を見せてなんてことを言う。
聞き慣れたバラードにポケットから携帯を取った。
……そういえば連絡してなかったか。そりゃ、慌てるわな。ジンの好感度また下がったかも。
「オネーサン、電話ってしても大丈夫?」
かまいませんよ、と言う。それに携帯を耳に当て、相手と通話した。
『Aさんっ!?』
想像していた以上に焦ったひなの声。その奥では微かにかなの、出たか?という安堵した声が。
二人して心配性だなと思う半分、俺って愛されてるなと自惚れる。
「うん、俺だよ。ごめんね連絡しなくて。大丈夫。話終わったから」
『あと1コール鳴って出なかったら、突撃しようかと』
「おまえの精神狭まってやんの」
『寿命だって縮まったよ……』
軽い口調で話していると、お友だちかなと言う風にコナンが小首をかしげる。
愛らしい仕草に思わずキュンとして、頭を撫でた。
「じゃあそーいうことだから。迎えに来て、ポアロっていう店」
はい、と言って通話が切れる。携帯をポケットに直すと、一息吐いた。
疲れたようなその様子に心配そうに見つめる。まるで、本当に"雛"だ。
当初俺を探っていたような態度を取っていたくせして、今は完全に心を許している。
この子は、甘い。
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