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15話 ページ17

「なんか、最後の方俺……キャラ崩壊した?」

「まぁ、普段のあなたではありませんでしたね」

手を差し出して携帯を受け取る。普段ではなかったと言われて、しかし自分でも自覚はあった。

頭で考えるより、言葉を選ぶより早く、喉から声が溢れてしまった。

あれを人は、衝動的。
もしくは……感情的、と言うのだろう。

「今からお仕置きされそうな、変な高揚感だったなぁ。あんなキモチーぃなんて……」

「そう感じるのは、たぶんAさんだけだと思います」

苦笑してひなが言う。そうかなと首をかしげ、頷く彼の頬をつねった。

上部だけの感情を取り繕い、何も楽しくない世界を褪めた目が見つめる。これが俺の普通。

でも、それが今日少し綻びを見せた。

――赤井秀一。

お前と出逢ってから俺、変なことばかりだよ。みんなの"普通"を体感しつつある。


「ほんと、おもしれぇやつ」

喉から出た俺の声は、ひどく穏やかだった。

その声に二人が顔を見合わせ、安堵したように微笑む。それから腰を折り、

「何かあったら呼んでください」

「その時はあの男、殺しちゃっていいですよね?」

と、どこか嬉しそうな雰囲気を残して、部屋から出ていく。

可愛い笑顔を浮かべるひなに手を振り、閉まった扉と同時にやめる。

「――」

眩しい天井の電気を見つめ、チカチカする目が瞬きを繰り返す。

倒れるようにベッドに寝転がり、熱いなと呟いて服のボタンを外した。

「あ、そういえばそろそろあいつらと会わなきゃなぁ。勝手に人のシマで好き放題しやがって」


「――独り言の最中にすまない。勝手に入ってよかったか?」


「……あのな、ここは黙って襲うトコ。せっかくのムードが台無しだよ、秀一」

「生憎相手に乱暴する趣味はないんでな」

電気を見ていた俺の目に、目付きの悪い男が映り込む。

少し荒い息。汗ばんだ額。余裕の無さそうな顔は、俺の欲求を更に高めた。

首に腕を回して、ぐっと顔を近づける。鼻を動かすと、嗅ぎ慣れた匂いに口角を上げた。

「んじゃ、激しいのはどう?」

「ふむ、それは……むしろ好きな方だ」

獣のように鋭い眼光に艶っぽい熱がこもる。
まるで、矢に射られた小動物の気分だ。

まだほんの少し煙草の味が残る唇にキスする。舌を絡め、熱い吐息が掛かる。

秀一の熱い舌に口が侵され、頭がぐちゃぐちゃになって、蕩けてしまいそうだ。

ずっとこうしてほしい。
こうしてくれと望むようになった。



会えなくなるのは、嫌だ……なんて―――女みたいに縋る俺をお前はどう思うのかな。

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作者名:暁の雨 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年4月20日 20時

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