13話 ページ15
「あのじじい、いつかぶっ殺す」
「そろそろおっ死ぬ頃合いなんだし。もう少しの辛抱、な?」
険しい表情をするひなを宥めて、部屋の中に入る。そしてさも当然のようにジャケットを脱がした。
ベッドに腰を下ろし、煙草を口に咥える。かなの所持するライターを借りて火を点ける。
煙を吸うと、胸のモヤモヤが晴れる。
苛立ち、もしくは欲求不満……
ストレスが極限に溜まるところで吸えなかったからなぁ。
「……あ、そういやニュース見てねぇな。ひな。棚倉どうなった?」
――棚倉順が起こした連続殺人事件。
動機や、被害者などわかりきっているが、結局のところ結末を知らないままだと思い出す。
その人物の名を出すと、露骨に嫌な顔をした。が、すぐさまタブレットを操作し、ネットに検索する。
「棚倉は日本警察に連続殺人事件の犯人と逮捕され、裁判の結果死刑が決まったようです」
「恋人を殺した動機はどうなってる?」
「他の男に惚れたことに腹を立てて殺害した、と言う風になってます」
「……あぁ……あいつ、全部話さなかったんだ」
棚倉は、周りから穏やかな善人と言われるくらい、人柄がよかった。
殺人を起こしたくらいなのだから、穏やかでも善人でもないだろう。――と、真実を知らなかった俺は当初、そう非難した。
人物調査を念入りに行った結果、俺の目にはやっと真実が映った。
真相はこうだ。
棚倉の恋人だった木村由衣が惚れた男は、愛した女に暴力を振るう外道だという。
当時同棲をしていた棚倉はある日、由衣の太腿に火傷の跡を見つけた。
元々由衣が自分以外の誰かを愛していたことは知っていたが、傷ついていることは流石に知らなかったらしい。
由衣に問い詰めて、もうやめろと忠告した。
だが彼女は恐怖に支配され、彼を愛していると拒絶する――
『俺は君を愛してる、だから幸せになってほしいって思うんだよ!由衣、そいつから離れるんだ!』
『彼は私を愛してるの!私も彼を愛してる!』
『傷つけられてるじゃないか!それでも、君は愛してると言うのか?』
『彼は愛してるもの!わたし、は……愛して……ほしいからぁ……』
『っ……由衣……』
『―――あいして』
寂寥に響く、愛の言葉。
それはいったい誰に向けたものか、知っているのは棚倉だけ。
互いに交わした愛の言葉は、呪いのように棚倉を蝕み、縛って……
『……愛してるよ、由衣。ずっと。俺は君だけを愛してるからね……』
由衣にすべての愛を捧げることで、愛してほしいと泣く彼女を慰めるようになったんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 163人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
