11話 ページ13
「たいへんお待たせしました。各組の組長さん方、元気〜?」
静かに組長らしく挨拶を述べると一転、無邪気に手を振って笑う。
その、飄々とした態度を気に食わない者は当然多い。
わざとらしく大きく咳払いをして、眉間に皺を寄せる。射抜く鋭い眼光に、見たものの身震いが止まらなくなるほどの威厳溢れる初老の男だ。
おい、と嗄れた声が呼び止める。肩を竦めて、その男に返事をした。
「なんですか」
「いい加減にしないか。遅刻も、その態度も。あんまり俺たちをイラつかせるな」
「俺たちっつーことは、他の皆さんも同意見なんですね?」
ぐるりと組長たちの顔を見渡して、言う。それに答えるものなどいない。
答えても、答えなくても、この二人に目をつけられて面倒になることが知れているからだ。
無意に干渉をしない。
それが、この世界に住む彼等の暗黙の了解(ルール)。
「――まあまあ、喧嘩はそこまでにしよう」
室内の空気が一変、冷たく張り詰める。
喧嘩を仲裁した声は穏やかなものだ。なのに、どこか計り知れない冷たさを感じる。
声の主は俺の方を見ると、目元の皺をより深める。
「さっきから君のところの忠犬が、牙を向いて睨んでいる。このままだと彼の喉に噛み付きそうだ」
と、背後に控えている忠犬――ひなを振り返る。
確かにいつもの可愛い顔をしかめ、全身から鋭い殺気を溢れさせている。
同じく控えているかなに目配せし、殺気立つひなを初老の男から遠ざける。
そして声の主に頭を下げ、無礼を詫びる。
「すみません。あいつにはちゃんと言い聞かせておきます」
「いやいや、構わんよ。いい部下に恵まれて、いいアタマになったもんだねぇAくん?」
優しい笑顔を浮かべて、称賛する。ありがとうございますと御礼を言った。
――つくづく腹の底が見えないお人だ。
用意された一人用のソファーに腰を下ろし、名だたる重鎮を見渡す。
横に立ち、各組長を見据えてかなが言う。
「ではこれより、梟夜組組長天羽Aを主宰とし、会合を始めます」
163人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ