十九話 ページ20
今日の帰り道はこの前よりも会話が弾んだ。共通の話題でもある中原君のことは珍しく話題にならなかった。
少しして私の家に着いた。
「じゃあね、太宰君」
「うん、ばいばい。Aちゃん」
五月ということもあり、暖かい風が私たちを包む。無言が続く。お互い立ち去ればいいのに、二人ともそれをしない。なんだか不思議な気持ちにさせられる。
やがて沈黙を破るように太宰君が云った。
「明日、楽しみにしてるね」
一瞬、何のことなのかわからず、きょとんとする。でもすぐに髪型のことか、と気づく。微笑む太宰君に、私も声をかける。
「うんっ!期待しててね、太宰君!」
*
翌日。玄関を開けると、太宰君の姿が。後ろを向いていたので、驚かせるように、おはよう!と声をかける。
太宰君はもったいぶるようにゆっくりと振り返った。
「Aちゃん、おはよう。すごく似合っているよ」
太宰君は私の髪を指してそう云った。
私の髪には今、三つ編みが施されていた。両サイドの髪を三つ編みにして、後ろで結ぶ、所詮三つ編みハーフアップであった。
昨日は珍しく課題がほとんど出されなかったので、数十分で終わらせて、髪を結ぶ練習をしていた。その甲斐あってか、自分からでも上手に結べた自信がある。
「化粧もしてるね」
「よく気づいたね」
太宰君の云う通り、化粧もしていた。お母さんが高校生になると必要になるかもと買ってくれたものだった。昨日引き出しの奥に封印されていたのを解放した。
化粧をしている生徒は多いが、一応校則違反なので薄めに。太宰君曰く、スケバンみたいなスカートも折って、いつもより短くした。
鏡を見れば、別人のような自分がこちらを見つめている。いつもと違う自分に、私の心は浮かれていた。
323人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
嘘だろお前まさか - マヂこの小説好きです…これは切実に夢主チャンと中也結ばれて欲しいけど、太宰サンの小説(メタ)だし太宰サンの気持ちも報われるといいね…考えれば考えるほど難しいン…もう会話の一つ一つがえもいというかなんというか!!!! (2月20日 22時) (レス) @page31 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
Kakinotane - 好… 最高か!?太宰さんかわよいし、中原さんも主ちゃんを支えてくれてるの良いなぁ (2月10日 17時) (レス) id: 495f3defd1 (このIDを非表示/違反報告)
あっぴー - くぅぅぅふつうに尊い… (2月10日 14時) (レス) @page28 id: 9335c42a96 (このIDを非表示/違反報告)
橘たまき(プロフ) - 感想さん» コメントありがとうございます!頑張ります! (2月4日 18時) (レス) id: e2eb5250a2 (このIDを非表示/違反報告)
感想 - なんだかんだ一番面白い好きお話の続き応援してるので完結してください! (2月4日 18時) (レス) id: 37e340b4fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:橘たまき | 作成日時:2023年12月5日 15時