私が真蛇 2 ページ9
日が、春の暖かさを連れてきた。
山へと踏み込んだ。
私は走るのをやめ、山を登った。
獣道を突き進み、足やら手やら顔やらに傷が増えていく。
そんなことお構い無しに、また前だけを見て進む。
しかし進み続けた足も、歩みを止める。
腹が減っては、動けない。
膝をつき、やっとの思いで近くの木にもたれ掛かる。
太陽がちょうど真上にいた。
程よく暖かい日差しが、木の間から差し込み
心地いい気持ちになる。
「……どうして、こんなとこに…」
心地よく眠ろうとしていたのに、
誰かが影を作った。
「……だ、れ…」
その人は手袋をしている手で私を抱えた。
「……うん、そうだな、…私は
小さな角が生えて、どこか悲しさを感じさせるお面をつけた、頭巾を被った人が私を拾った。
「私の家においで。……まずは手当をしないとね。」
その人、生成は、私にとても優しくしてくれた。
白髪と黒髪が入り交じった髪を低い位置で結んで、お気に入りなのだろう黒から水色へと移り変わっていく色の頭巾付き羽織を着て、日中はいつも頭巾をかぶり、夜になるとどこかをフラフラしに行く。
ご飯はいつも別々。
作って私が食べてるのを見てる。
食べないの?と聞いても
嬢ちゃんが食べたあとに食べてるの。と答える。
昼間の縁側、生成は家の中にいる。
「嬢ちゃん、名前は?」
ある日、私は名前を聞かれた。
「柊、楽空。」
「そうか、楽空って言うのか。いいね。私は好きだよ。」
そう言って生成は私の頭を手袋をした手で撫でた。
この人自身からは優しさがあるのに、この面からは悲しさがあるような気がする。
「…ん?この面かい?…これはね、生きたまま鬼となった女の人を表しているんだよ。」
“まるで、私みたいだ。”
生成は、そう言った。
その時は少しあの人自身からも悲しさを感じた気がする。
その次の日。
そう、あれは、夏が終わりかけ、山の葉の色が色とりどり鮮やかに彩られてきた日だった。
「…ねぇ、楽空。刀に、興味ある?」
生成が縁側にいた私に、どこからか刀を持って庭に現れた。
日が差さないせいか、薄暗い。
「…鬼を、知ってるでしょ?」
その時のあの人からは、何も感じられなかった。
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あい - この物語とても面白いです。続きが早く見たいです。 (2020年1月25日 23時) (レス) id: bcb6bd7e00 (このIDを非表示/違反報告)
なか(プロフ) - 金米糖さん» そんな勿体ないくらいのお褒めの言葉ありがとうございます!これからも精進して参りますのでどうか見捨てないようお願い致します! (2019年12月8日 7時) (レス) id: f9727ae2bd (このIDを非表示/違反報告)
金米糖 - また読んでしまいました。何回でも読みたくなるお話を作れて尊敬します。 (2019年12月3日 21時) (レス) id: e31feca5f7 (このIDを非表示/違反報告)
なか(プロフ) - 瑠奈さん» コメントありがとうございます!捏造に想像を重ねて物語を作っておりますので、どうか楽しんで頂けたら幸いです! (2019年11月28日 12時) (レス) id: f9727ae2bd (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈 - 初コメ失礼します!とても面白いです!続きが楽しみです!無理せず作者様のペースで更新頑張ってください。 (2019年11月28日 0時) (レス) id: c8f2fa6e5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なか | 作成日時:2019年11月19日 11時