クロトの微笑。

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藤「いい香りですね」

北「はい、シスターが庭で育ててるんです」

藤「ありがとうございます」

北「いえいえ」







窓辺に飾られたその花の蕾を
人差し指で優しく撫でて、藤ヶ谷さんは
花に語り掛けた







藤「お前ら....よっぽど大切に育てられたんだね」






記憶はないみたいだけど、こーゆうところは
以前の藤ヶ谷さんと変わっていないような気がした







北「さっきは何の本を？」

藤「え...あ、いや....」








心のどっかで、ギリシャ神話の本を
読んでいてくれたことを期待している自分がいた







藤「昔から好きだった作家の本を」

北「あ、そうでしたか....」









完全に光を失った気がした





ここでギリシャ神話の本を読んでいれば


まだ少しだけ、ボクに勝算があったかもしれない





それをヒントに、もしかしたら記憶を
戻せるかもしれないから








クロト様、あなたは酷い






どこまでボクを苦しめたら
気が済むんですか？






ボクはあなたに、何かしましたか？







勝ち目はない。



そう思っていた矢先






藤ヶ谷さんは、ベッドから起き上がって
サイドボードの引き出しから小さな小瓶を
取り出した

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