【忍たま夢】きり丸の為に死ねるなら悔いはない2

広がる輪 ページ5

「いらっしゃい勘ちゃん」

今日もまた空いてきた時を狙って勘ちゃんが来た。友達と一緒だ。鉢屋三郎か、不破雷蔵かどちらだろ？

「やほ、みたらし二本。と、三郎は？」
「んー俺もみたらしで。二本」

鉢屋三郎だったらしい。学級委員つながりか。

「はい、かしこまりました。少々お待ちください」

私はみたらし団子計4本を、二人の元に運ぶ。
売り上げの貢献になるのだから、大いに結構だ。もっと友達連れて来てくれ勘ちゃん。
あ、でもきり丸はダメ。きり丸以外でお願い。

「お待たせしました」
「君、小さいのに働き者だなあ」

鉢屋さんに褒められたー。
えへへー、テンションあがっちゃうよ〜。

「だろ？」
「なんで勘右衛門が誇らしげなんだよ」

それな、と私は同意したい気持ちを抑えた。
ダメだダメだ、私は団子屋の看板娘。
下手な言動は避けなきゃ。
三郎はゲシ、と勘ちゃんの足を蹴った。
勘ちゃんは大袈裟に呻いている。

「そういや、旅に出るのは諦めたの？」
「諦めてはないです。一旦保留です」

別名、問題の先送りともいう。ああ〜こういうの一番良くない。
けど私宿題とかも後回しにする派なんだよね。

「じゃあ俺が卒業したら、俺が旅のお供してあげるからそれまで保留にしておいて」
「ええっ、そんな申し訳ないですよ」

忍の護衛なんて、ただの町娘が贅沢すぎ。ていうかそんなお金ない。私の血筋がどこぞのお姫様に繋がってる、ってんなら話は別だけどさ。

「勘右衛門、お前なあ……？」
「なんだよ三郎、言いたい事があるならはっきり言えよ」

あ、やっぱり忍が町娘の護衛なんて、って認識で間違ってないんだ。
私は鉢屋さんの態度で察する。

「……はあ、いや、何でもないさ。ところで、君、名前は？」

鉢屋さんに話を振られた。私の名前は市だ。

「市って言います。お好きなように呼んでください」

お市とかいっちゃんとか、なんとでもどうぞ。
市、っていうとお市の方みたいでちょっと高貴な気分を味わえる。
……名前負けしてるって言わないで、自覚あるから。

「いち？」
「はい、えっと、町とか人が集まるところ、って意味の市です」

おかしいな、昔風の名前になってると思ったんだけど、鉢屋さんにはピンと来なかったみたいだ。

「あれ、珍しい名前でした？」
「いや、そんなことないと思うよ？ 三郎どうしたの」
「……いや、なんでもないさ」

鉢屋さんは首を振った。
ええ、本当になんなのさ。

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