同じ轍を二度踏む3 ページ38
勘ちゃんがガチャガチャと錠前を揺らし、ガッチャンと開く音がする。
鍵開けもできるのか、とうっかり感心してしまったが、勘ちゃんの手に握られていたのは鍵だった。
なるほど、盗んできたのか。手癖が悪いことで。
私は勘ちゃんに担がれて、運ばれた。
乱きりしんは自分の足で走っているというのに、同い年の私は担がれているなんて情けない。
ここ最近の私、本当に何もしてないな?
「待て!!」
正面から向かってきた城主様にそう声をかけられた。
勘ちゃんは「鉢屋〜〜!」と小声で唸っている。
多分、城主様は私のことを心配して頑張って必死で駆けつけてくれたのだと思いますから。
鉢屋先輩を責めないで。どうどう。
「あの、城主様、長い間お世話になりました」
「君はっ、同意の上で、連れ去られてるのか!?」
「えっうーん、そう言われると微妙ですな……」
「嘘でしょいっちゃん。閉じ込められたいと思ってるの?」
「居心地良かったのは本当ですよ。働かなくても食べていけましたし。怠惰で無為に過ごせる貴重な時間でした」
城主様は少し息を整えて、私に話しかけた。
「僕は、君が望むことをするよ。彼らを見逃して欲しいならそうするし、彼らを追い返して欲しいなら追い返そう」
は、きりちゃんを逃したければ私の口で「逃げたい」と言えと?
……流されるように生きてきた私に、難しい要求だ。でも、この答えは一つしかない。きり丸が侵入者として捕まる未来なんて求めてない。
「私は彼らと共に行きます。さようなら」
「……そうか。ならばこれを」
そう言って近づいてきた城主様を勘ちゃんは警戒するけれど、私が無警戒に手を差し出したから、城主様はポンと巾着を手の上に乗せてくれた。
「これ、私の」
母さんの簪とお金が入っている巾着だ。危ない、取りに戻らなきゃいけないところだった。
「君が、死にたいと思っていた事はわかっている。結局、僕のような奴にはどうにもならなかったけれど、それでも、僕は君に元気に生きていて欲しいと願ってるんだ。だから、君が逃げたいと言うなら、いきたいと言ってくれるなら僕はそれでもいいよ。どうか、元気で」
私は驚いて目を見開く。泣きたくなった。
彼は存外、私のことを深く理解してくれていたらしい。
そして私の希望を知った上で、私に生きて欲しいと願ったのか。
思い返せば、尖ったものや鋭利なものは牢屋に持ち込まれなかった。
いかついお兄ちゃんですら帯刀してなかった。
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スイちゃんのご友人のご友人 - 完結おめでとです!🎉 (2023年2月2日 3時) (レス) @page45 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
スイちゃんのご友人のご友人 - あふ、夢主ときりちゃん尊い三c⌒っ.ω.)っ シューッ末永く爆発してほしいですね!(いい意味で) (2023年2月2日 3時) (レス) @page45 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 完結おめでとうございます! 続編に気付かなくて見るの遅くなってしまいました。いっちゃんの考え方が少し改まってきて本当に良かったです。そしていっちゃん(その他のキャラも)めちゃくちゃ可愛い……! 素敵な作品をありがとうございました! (2022年9月15日 18時) (レス) @page45 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
pinatu(プロフ) - 完結おめでとうございます まだまだ続くかなと思ってたんですけどキレイに終わったので見やすくて好きです。面白かった! (2022年8月3日 23時) (レス) @page45 id: 6584cbaedd (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 完結おめでとうございます!!!ほんとに面白くて大好きな作品なのでずっと読み返します…🥲 (2022年8月2日 12時) (レス) @page45 id: 554af904d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まあじ | 作成日時:2022年7月2日 17時