【忍たま夢】きり丸の為に死ねるなら悔いはない2

巣篭もり生活2 ページ34

学者先生になりたい、なんて絵空事が現実になってるような引きこもり生活にも慣れてきて、気づけば一年くらい経っていた気がする。

しかし、この世界では1年がまた繰り返されるらしい。
そのことに、みんなは気づかない。
そう、私は2回目の10歳の春を迎える。
あぅ、くそっ、どうして私はいらんことばっかり気付いてしまうのか。
ハァイSANチェック入りまーす！
サザエさん時空に突入するのか。ならば私は永遠の幼女か。……くっ、生き辛いな。早く大人になりたい。
まあ、私は死に損ないなので大人になるまで生き残ってるか分からないけれど。
可能であれば。もしなれるなら。
早く大人になりたいものだ。



・



時折散歩に出してくれるいかつい兄ちゃんに、私は毎度声をかけていた。返事はまだない。なんでさ。可哀想な幼女の話し相手になってよ。こちとら10歳やぞ。会話を忘れそう……私、日本語話せてる？ 大丈夫？？
日光浴を終えたら、また地下牢に閉じ込められて紙と筆を手に取る日々だ。代わり映えしない。このお城に提供したオーバーテクノロジー、どうしてるんだろうね。
めっちゃ気になるけど藪蛇っぽいから聞かないことにする。
要らんことに気付きたくない。正気を失いそう。




ある日のこと。いかつい兄ちゃんに話しかけると、初めて返事があった。

「……お前、逃げたくないのか？」

いや、返事とは言えなかった。私は「今日もいい天気ですね」と声をかけたのに、全然違う返答だった。でも初めて意思疎通できそう。
わたしうれしい。

「私が逃げちゃうと、城主様首吊っちゃいそうで。可哀想じゃないですか」

本当に。
あの人、そのぐらい悲壮な顔してる。
だからおんどれが加害者やろがい。
しかしそんな顔されるから、彼が善人だと知っているから憎めないのだ。ぐぬぬ。
ストックホル、いやいや気付かないったら気づかない。私はなにも知りませんとも。

「城主のため、か？」
「あと、思ったより居心地がいいので悪くないな、と」
「……」
「もしかして心配してくれてます？ 大丈夫ですよ！ 私、こう見えて図太いんです。たしかに今の城主様はちょっと狂人っぽく見えますけど、まあ、それすらも合理極めてると思えばギリ、ギリギリ、ギリギリギリギリ納得できるので恨んではいませんし！」
「……」

また返事がなくなってしまった。
城主様についての質問されたから、城主様のお話が聞きたいのかな？

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