【忍たま夢】きり丸の為に死ねるなら悔いはない2

流された先 ページ16

きっと私は疲れてた。

だって、今まで野宿も野営もしたことなかったうら若き幼くか弱い少女が、突然なんの準備もなく三日間を山で過ごし、その間獣や山賊に襲われないか少し緊張しながら浅い眠りを繰り返してたんだ。

そりゃ疲れるわ。
というか何の準備もせずに出てきたのがまずバカ。
普通さ、風呂敷に着替えとか食料とか詰め込んで家を出るでしょ。
ああ、私の有り余る行動力が恨めしい！

“日本の川は長さが短く流れが急”、小学生でも習う一般常識だというのに。
大丈夫かなーって思ってた私は、10歳少女の体の小ささナメてた。
「女性は膝まで、男性は腰まで」あの川の水深は間違いなく私の胸まであった。
私の馬鹿野郎。何が「名案！」だふざけんな、まともな判断力さえあれば即却下だよ。
というかそもそも、もし運良く流されずに済んだとして、私は川から上がった後どうするつもりだったんだろう。

拭くものもない、体はビシャビシャ、服もビチョビチョ。
どうするつもりだったんだホント。
脱いで乾かすのはアリだけど、公然猥せつ罪は？
けどそのままいたら絶対風邪引いてた。風邪引いたまま山で過ごすとか何そのオウンゴール。
死にたいのか私は？ ……死にたいのか、私は。

はあああ、とため息をついて、ようやく現実を見る。

ここどこ。

家？ 小屋？
下流に住む親切な誰かが、私を拾い上げてくれたのかもしれない。
服も私の服じゃない。何から何まで申し訳ねえ。

そこでハッとして体を触るが、巾着袋がない。
辺りを見回してもそれらしき物は見当たらない。
もしかして、川に流された……？
うわああり得る。どうしよう最悪。
お金はいいとして、簪はダメだ。
あああ、なんで簪を持ち出したんだろう。
大人しくおばさんの家に置いてこればよかったのに私のバカ。

……探そう。川のどこかに引っかかってる可能性もある。
下流から上流に向かって進んでいけば、どこかで見つけられるかもしれない。
見つからなかったとして、やらずに後悔するより絶対マシだ。

やらないはダメだけど、やってダメなら仕方ない、よね。

私は外に出ようと立ち上がろうとした時、小屋の中に人が入ってきた。

え、え。いやあ、あの……マジか。

「お、嬢ちゃん目が覚めたか」

第三協栄丸さん……マジでか。

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