【忍たま夢】きり丸の為に死ねるなら悔いはない2

旅立ち　勘右衛門視点 ページ11

俺は今日、三郎と一緒に委員会用のお菓子を買いに来ていた。庄ちゃんも彦も団子が気に入ったらしい。

「あれ、いっちゃんは？」

俺はいつも出迎えてくれる可愛いいっちゃんがいないことを疑問に思い、そう問いかける。するとおばちゃんは「それがね」と事情を話してくれた。

「あの子、家出しちゃったのよ」
「家出！？」

いっちゃんはおばさんとおじさんが大好きだったから、ここに不満はないと思ってたんだけど。

「三日前かしら、机の上の置き手紙には旅に出るって書いてあって……けど、風呂敷は置きっぱなしだし、着替えも食べ物も何も持ち出してないからもうすぐ帰ってくるとは思うんだけどねえ。心配で……」
「そうですか」

いや、多分いっちゃんは旅に出たんだ。
俺はいっちゃんに「簪を預かって」と言われた時のことを思い出す。
あの時のいっちゃんは、少なくとも俺が卒業するまでは“帰ってこない”みたいな話をしていた。

だから当分、帰って来るつもりはないんだろう。
なんで突然？
あの時はまだ、おばさんとおじさんの許可を貰ってから、と言っていた。事情が変わったのか？

風呂敷を置いていったのは、荷造りもしないで衝動的に出ていったからか……あり得る。
いっちゃんには無駄に度胸と行動力があるから(山賊事件でよく分かった)。
だとしたら、身一つでどこかへ旅に出たって事だ。一体どこへ？

「こんにちはぁ、おばさん！ 今日はお団子40本食べちゃお〜！」
「しんべヱ、あんまり食べると太るよ？」
「食い過ぎんなよ〜。……あれ、店番の子がいない」

騒がしい声に振り向くと、そこには学園きっての問題児……じゃない、元気な三人組がいた。

「こんにちは三人とも」

俺は三人に声をかける。

「「「あ、尾浜先輩、鉢屋先輩、こんにちは！」」」
「先輩たちもよく来るんですか？」

乱太郎にそう聞かれ、鉢屋が答える。

「俺はあんまりだが、勘右衛門はもうずっと通い詰めてるらしい」
「ここの団子、美味しいからね」
「あの、じゃあここの店番の子の事知ってますか？ 今日、いないみたいなんですけど……」

と、きり丸に訊かれる。

「いっちゃんのこと？」
「いっちゃん？」
「うん、市だからいっちゃん。なんか家出しちゃったみたいで、今日はいないんだって」
「市、すか。Aじゃなくて……」
「どうしてAなんて名前だと思ったんだ？」

鉢屋がきり丸に尋ねる。

「俺の幼馴染にすっごく似てるんすよ。けど、やっぱ他人の空似っすかね？」

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