ぶっ壊せ!2 ページ10
「やりぃ!」
少年は革の長財布を手に掲げ、仲間達に向けて振る。
「すげえ!」「流石ぁ!」「しばらく困らねーな、こりゃ!」
少年に対して次々に賞賛の声が与えられる。
中身を見てみると実際、その財布に相応しいぐらいの金額が入っていた。
誰もがそれに魅入っていた時、一人その輪に加わらず、無表情な少年がいた。名前を芥川ーー
「すまない、返してもらえないだろうか」
ばっと慌てて振り返る少年達。
「なっ、なんで!? 撒いたはずなのに!」
「お前、撒いたんじゃなかったのかよ!?」「こいつから盗ったのか?」「んだよ、こいつもガキじゃねーか」「悪いが返せねーよ、ここらじゃそれがルールだ!」「そーだそーだ!」
わあわあぎゃあぎゃあと織田作に対して、ヤジを飛ばす。
織田作は少し顎に手を当てて考え込む仕草を取る。
その間にある一人が気付く。
「あれ、拳銃……」
ぽそっと呟いた言葉だったが、動揺を誘うには十分過ぎた。
「なっ、あいつやばい奴じゃ……!?」「早く返した方が」「馬鹿言え! この金があれば暫く食うもんに困らなくて済むぞ!」
織田作は、その様子に気付いたのか拳銃に手を掛けようとする。
その瞬間、黒刃が織田作のいた場所を切り裂いた。
「ああ、悪い、害意は無いんだ。財布だけ返してくれ。中身はやるから」
は? とポカンとする浮浪児達。
「流石に全部やる訳にはいかないが、多少ならいい」
「……何、同情して恵んでくれるってか?」
「ああ」
「ーーー!! 芥川!!」
少年のその一言で、芥川の異能が火を噴いた。
尤も、織田作にとってその程度避けるのなぞ容易かったが。
織田作は、仕方ない、というように一息吐いてから、財布に向かって一直線に加速した。
そのまま財布を持っている少年の手を引っ捕え、奪い返した。
「ここじゃ、
じゃあ、返して貰うな、と声を掛け、呆然とする少年達を置いて織田作は立ち去ろうとした。
「待て」
それを芥川が呼び止める。
「なぜ、避けれた?」
逡巡したあと、織田作は答える。
「経験、だな」
織田作は言葉を続ける。
「辛い事も沢山あるだろうが、強く生きろよ」
こうして、孤児達と織田作との邂逅は、静かに幕を引いた。
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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時