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シャチとイルカの共演6 ページ42

子供達は、いた。
いたが、いなかった。

「は……?」

私は目の前の光景が信じられなかった。
なぜだ。なんで子供達がみんな倒れている?
下に広がる、赤いものは。

子供達の傍に立っていたのは、拳銃を持ったミミック兵だった。

撃ったのか。子供達を。
私が、ほんのちょっとの間でも目を離してしまったから。
私も子供達と一緒に飛べば良かったんだ。子供達から目を離してはいけなかった。
ああ、私の両手から、命がこぼれ落ちていく。

……いや、まだだ。まだ、間に合うかもしれない。助けなきゃ。
与謝野先生にさえ見せれば、助かるのだ。

「おい、大丈夫か!? しっかりしろ、すぐに助けを……」
「無駄だ。もう死んでる」

ミミック兵は残酷に現実を告げた。

「まだだ! まだ死んでない、そうだろ? 目を開けてくれ……!」

私は半狂乱になって子供達を抱く。一人では全員を抱くことが出来ないのがもどかしい。

彼らの眉間に一発ずつ。見ればわかる。即死だ。
彼らの体はまだ温かいのに。
彼らから音が聞こえることはもう、ない。

「あ、あ……」

現実が、冷たい残酷な現実が私の目の前に広がっている。
さいあくだ。わたしのせいだ。
わたしのせいで、みんな死んだ。
どうして。わたしはみんなを、助けたかっただけなのに。なんで上手くいかないんだ。
私は血溜まりに落ちた克己の手を握りしめる。あたたかいのに。ついさっきまで話してたのに。もう動かないなんて信じられない!

「うわあああぁぁぁあああああ!!!」

喉が焼け爛れるほど大声で叫んだ。
怒りと悲しみと憎しみと辛さと、色んな感情がごちゃ混ぜになって私の体に押し込まれている。今にも爆発しそうなのに、一向に溢れ出さない。
叫んでも叫んでも、私の心に蠢く感情は出て行ってくれなかった。
それどころか私の心の中にとどまって「やれ」と、「やらねばならない」と後押ししてくる。
喉が痛くて咳が出る。何度言葉を吐き出しても、私の感情はぐちゃぐちゃなまま。
非道な現実が冷たく重くのしかかる。

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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時

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