シャチとイルカの共演 ページ37
話は変わるが、少し私の余談に付き合ってくれ。
何事も、“過ぎる”というのは良くないと思う。
悲観的過ぎるのも考えものだけれど、楽天的過ぎるのも良くない。
今回の私は後者だった。
探偵社に入ったから、大丈夫だと思い込んでいたのだ。原作とは違う、織田作はミミックと関わらない。だから大丈夫だと。
そんな根拠、どこにもないのに。
・
久しく会ってなかった太宰から『今日、バーにて』と短いメールが来た。
予めそうやって予定を合わせて行くなんて滅多にない事で、私は少々驚いた。
だが太宰の事だ、凡人とは考えが違うのだろう。私は特に何の予感も無く、バーに向かった。
そこで知らされたのは『ミミックが動き出した』という事。
太宰は転生者である。
ミミック襲来の顛末を知っているのは、この世でただ二人、私と太宰だけだ。尤も、太宰は私が知っているという事を知らないし、私が織田作ではない事も知らないのだが。
太宰は当然、織田作を助けたいのだろう。
だから私にミミック襲来の話をした。そして太宰はこう言った。
「織田作、君は何もしなくて良い。この件に、君だけは巻き込みたくないんだ」
その言葉に私はあくまで織田作として「分かった。太宰が言うなら、そうするよう努力しよう」と答えた。
無論、関わる気など皆無である。
私は既にポートマフィアを抜けた身、闘争とは全くの無関係。ミミックとポートマフィアで勝手にやってくれ。
なにせ私は、子供達も織田作も守らねばならないのだ。危険な事に首を突っ込んでいられない。
……本当はジイドも助けられると良かったのだけれど、最近は諦めている。
いかんせん、ジイドに生きる気力がない。死ぬ事に希望を見出してる奴に生きる目的を与える事は、酷く難しい。それに彼自身、生かされたいなんて思ってないだろう。
また、織田作とジイドが分かり合えたのは、死闘の末に特異点を体験してからだ。言葉を尽くして伝わるような相手ではない。
私にとって、一番大切なのは織田作を助ける事で、同じくらい大切なのが子供達を死なせない事だ。
それ以外のことなど、私にとって二の次三の次。
・
関わるつもりなど、本当に微塵もなかった。
だが、運命とやらが本当にあるのだとしたら、そいつはひどく理不尽で、余程俺の事が嫌いなんだろうと思う。
関わるつもりはなかった。だが、大きな流れに巻き込まれるように、俺は否応なく戦場に引きずり出される事になるのを、まだ知らない。
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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時