【文豪ストレイドッグス】シャチはイルカを食べるのだ

シャチは探偵社を所望する2 ページ31

「君がオダサクだな！」

ばばーん、という効果音が付きそうなほど元気尋ねてきたのは、江戸川乱歩だった。

「ああ」
「君は今日から僕の助手だ！ そして、今日僕は仕事がある！」

ああ、付いて来いってことか。
織田作の入社試験が、乱歩さんに一任されているとみていいだろう。
私は一つ頷いて乱歩さんに付いていく。

「あ、これ持って」

ヒョイっと投げられたのは麩菓子だった。軽いが嵩張る。

「こっちも」

また投げられた。今度はかりんとうだ。あれ、乱歩さん、駄菓子が好きだったっけか。

「あとこれも！」

今度は棒付き飴だ。
その調子でポイポイ投げられるのを両手一杯になるまで持たされ、乱歩さんはようやく満足したらしい。

「よし、それじゃあ行こう！」

ちょっと待て、袋に入れさせてくれ。


・


お菓子を袋に詰めている間、辛うじて待っていてくれた乱歩さんに追いつくと、乱歩さんは「遅いぞ！」と文句を言ってずんずん先に進み出した。
電車の乗り方が分からない乱歩さんの代わりに切符を買い、乱歩さんの話に付き合う。
私も織田作も饒舌な方ではないので、乱歩さんのお喋りに相槌を打つばかりだ。

乱歩さんの一方的なお喋りに付き合っていると、いつのまにか目的地にたどり着いた。
警察がたむろっている中に乱歩さんは物怖じせずずんずん入っていく。

「ふーんこれが例の殺人事件ね」

乱歩さんは興味薄そうにそう言って、

「けど僕が来たからにはもう安心！ なんせ僕は世界一の名探偵だからね！」

と言い放った。
警察の人は頭を抱えている。いつもこの調子らしい。
乱歩さんは懐からメガネを取り出して装着して、あっという間に犯人を言い当ててしまった。
証拠と根拠を一頻りズラッと並べて、犯人を断言。
見事な推理だ。私には想像すらつかなかった。
その推理に穴は無く、乱歩さんの推理が正しい事を証明している。

乱歩さんは推理が終わると「じゃ、後は警察の仕事だもんね！」と締めくくって、警察の人に背を向けて帰っていく。
ちらりと警察の方を見ると、早速犯人を捕まえようと行動している。心配ないだろう。
私、本当に何もしてないな、と思いながら乱歩さんを追った。

帰り道、乱歩さんは私の持っている袋からお菓子を取り出しては食べ、喋りながら帰っている。

「さて、織田作」

私に話しかけてきた乱歩さんに、ん？ と呑気に返事をする。

「君、女性だったことがあるのかい」

その言葉は私を凍りつかせるのに十分だった。

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