シャチは探偵社を所望する1 ページ29
「異能力はあるか?」
探偵社社長、福沢諭吉にそう尋ねられる。
今は面接中だ。
これからの事を考えた時に探偵社がベストだと思ったが、落ちたらどうしようもない。他の企業の面接をしなければ。
……この歳で転職って難しいだろうから、是非探偵社に雇って欲しいところだ。
「はい」
「どんな?」
「数秒先の自分の未来が見えます。……大したものではありませんが」
ふむ、と福沢諭吉は顎に手を当てた。
「なぜ、探偵社に入ろうと思ったんだ」
「自分の異能力を人助けのために使いたいと思ったからです」
無難な受け答えだろう。諸々の思惑は話す必要はない。聞かれたら答える、それが織田作のスタンスだ。
「……分かった。採用しよう」
!
「ありがとうございます」
「その前に一つ聞きたいことがある」
なんだろうか。
「昔、私と会った事があるか」
それは、疑問の体をした断定だった。
「はい、随分昔に」
「……そうか」
福沢社長は目を閉じて、過去のことを思い出しているようだった。
しばらく沈黙が続く。
私は福沢諭吉との出会いを一つのターニングポイントだと考えていた。それが小説に書かれていたからだ。
しかし、福沢諭吉にとってはどうだろう。江戸川乱歩との出会いに付随するおまけのような存在だったのではないだろうか。
福沢諭吉は、よくそんな昔のことを覚えていたものだ。
「すまない、退出していい」
「はい、失礼します」
福沢諭吉の許可を得て、私は退出する。
何はともあれ、受かって良かった。
……ああ、でもまだ本入社ではないのか。
本来ならば入社試験を受けて、正式に入社になるはずだ。
中島敦だったら探偵社内での爆弾魔騒動、太宰なら手頃な任務の遂行、泉鏡花なら組合(ギルド)の作戦阻止。
さて、私は何をさせられるのだろう。
もちろん、織田作として完璧に振舞ってさえいれば、人格が疑われるということはない。
これから数日は更に“織田作らしく”を意識して行動することにしよう。
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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時