救いの手は光の有る所から / knsm ページ47
．
瞼を押し上げる。
その明るさには未だ慣れない。
きっと、私自身が暗くて陰湿な場所で長く生活していたのも原因だろう。
私の依頼主の死に様は、実に呆気ないものだった。
だからこそ私を雇っていたのだろうけど。
まるで味のしなくなったガムのように面白みも何も無い、ただ無様な姿ははしたなくて。こんな雇い主が今までこっちの世界で過ごせていたのは、私のお陰だったのかもしれないなんて淡い夢を見た。
『んっ』
「お、目ェ覚めたんか」
金色の短髪がきらりと輝いた。
私が見上げることさえ出来ない澄んだ青空に似た瞳は私を貫く様に見つめた。
ワイシャツと瞳とお揃いの水色のネクタイを結んだご主人＿コネシマさんは、私の頬をぺちぺちと叩いた。
『すみません、ご主人。つい寝てしまいました』
私は何百という人の下で従ってきた。
普通に良い人も、逆に悪人もいた。
護衛、身代わり、暗殺、隠密行動、妻役、ストレス発散道具、溜まりに溜まった欲望の行く末…。
私は拒まなかった。
生きる為にも、そして人生に希望を持っていなかったから。
どうせいらぬ人生なら、捨てる前にフリーマーケットに出品すれば良い。
きっと誰かの元なら、一瞬でもいいから誰かの為になれるなら別に良かったのだ。
「別にご主人やなくてええ。名前で呼んでくれ。慣れへんから…」
彼はそう言って頭を掻いた。
今までの依頼主は全員ご主人と呼んだ。
名前なんて覚える必要ないって思った。だって、どうせ一時の関係だから。きっと呼び親しむ前に別れる。
『コネシマさん、今日はお仕事ですか？』
「…っ、まあな」
コネシマさんは、昨日依頼主に依頼外の暴力を振るわれている所を助けてもらった。
依頼主の家だったし、正直助けなんて来ないと思って諦めていた所に空色の彼がやってきて、夢中で私を殴っていた彼は、意識朦朧としていた私でさえ気づいたコネシマさんに気づかず、額を撃ち抜かれた。
その生暖かな血と、銃を構えて鋭い眼光を向けていたコネシマさんが美しくて。
彼は私と違って穢れ知らずの優しい一般人。
光の元から伸ばされた
嗚呼、太陽が眩しい。
．
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作者名：眠斗 | 作成日時：2019年5月22日 21時
