【 d! 】僕色の花束を君へ【短編集】 (ページ32)

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Ⅱ ページ32

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「何故君はそこまで彼を心配するんだ？」

そう言った上司の目は細められ、淀んでいた。

まるで邪悪な何かを見るような目線を送られたAは、唇を噛み締めた。

そう、ここでは友達ごっこなんてものは無い。
ここにいるメンバーは所詮所属が同じだけ。
任務で一緒になってもコミュニケーションを取り、チームプレーで任務遂行をするというよりは、上から言われた任務通りのことを行うだけ。互いが危機に晒されていても助ける義理が無いと切り捨てるレベルだ。

そんな集団で仲睦まじいAと路傍は、非常に異質だった。

『友人なんです、唯一の』

「ふん、まるで恋人同士みたいで見ている方がうんざりするんだ。ああいうのは」
「まず、友人も恋人もこんな所で見つけるものなんかじゃない」

馬鹿にする様に言い、大笑いをする上司は汚い唾を飛ばしながら彼女をぎろりと睨みつけた。

そんな言い草に、彼女の怒りは溜まっていた。きっと路傍がいないのもあるのだろう。
強く握られた拳は震えており、奥歯がぎしりと鳴った。

『そんな奴じゃない！路傍は』

『生きてるんですか、彼は…』

「遂行報告があって帰還報告がない。それで察せない程君は馬鹿じゃないだろう？」

その言葉に、彼女の目は伏せられた。
黒く濁った瞳は、何処を見つめようとしているのかは分からない。

「明日は昼から任務だ。頼んだよ。路傍の幻覚が見える如きで休ませないからな」

─

青空は清々しかった。

自分も、これくらい美しければ良かったのに。

路傍も、わたしも。

汚れた世界では、

誰も信じられない。

信じた相手はいつ死ぬか分からない。

『ねえ、任務そんなに大切なの？』

『命を擲つほど？』

『私を、置いて、か、ないで…』

ねぇ、何時になったら帰還報告出してくれるんですか？

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