【 d! 】僕色の花束を君へ【短編集】 (ページ17)

今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:34,988 hit

真実なんて必要無い / zm ページ17

．

人狼パロ

──

息を潜め、インカムから絶え間なく聞こえる彼らの声に耳を傾けた。

「どうするんや！トントンとAはよ占いしなきゃやろ！」

「誰占えばええんや？はよ決めて！」

各々の声から焦りが感じられる。

空は今の状況を表すように重く、私やこの建物にのしかかった。
灰色は私の心に似ていた。

頬を冷たい風が撫でる。

急に人狼の存在を言われ、人狼を殺せと言われ。
迷いと焦り、何なんだとずっと狼狽え続けてきた私達だったが、どうやら腹を決めるのは人狼の方が早かったらしく、仲間がインカム越しに悲鳴をあげた。

その後、グロテスクな音が若干聞こえ、その仲間からの発信は途絶えた。

その時から、私達は別れ、人狼の追放に一致団結しようと誓った。

私は占い師。
1番重要で、1番疑われ、1番殺される役職。

対抗にトントンが出ているから殺す必要は無くても、狂人なのだろうな。

今まで仲良くしていたメンバーに、人狼がいるなんて。

考えたくもないそれに、頭を振った。

不吉な事なんて考えてはいけない。

＿＿でも、現に仲間はいなくなった。

そして、そういう状況に立っている。
誰かが絶対にやっている、それは覆らない事実なのだ。

夢に甘えてこの状況から逃げるだなんて事は出来ない。

だって私は占い師。
村の為には何でもしなくちゃならない。

「…じゃあ、誰にするかな」

霊媒師の声が嫌にこびりつく。
それはある種の死刑宣告。そう言っても過言じゃ無い。

弓の構えを止めて、霊媒師の声を逃すまいと耳を立てる。

すると、首元に何かを感じた。

『な、！』

振り向きざまに口に指を入れられ、言葉を失う。

そこには緑色のパーカーを纏う男…ゾムがいた。

しかし、彼は耳と大きな尻尾、そして極めつけには鋭い牙。

＿＿＿嗚呼、彼は狼なのだ。

水晶玉がするりと落下する。

「駄目やで？助けなんか求めちゃ」

「俺、人狼って…もう分かっとるよな？」

茶髪から覗く翡翠に似た瞳が鋭く私を貫く。
水晶玉に反射した私はきっと驚きの表情をしているのだろうなぁ。

「俺、本当はAが好きだった」

「だけどこういう関係なってもうたからなぁ」

私だってずっと好きだった。

私の唾液のつく指を舐める彼を見つめる。

「俺に白、出してくれるよな？」

ミュートされたマイク。

「じゃあゾムやな」

「せーの」

「白やな」『白でした』

若草は笑った。