【 d! 】僕色の花束を君へ【短編集】 (ページ14)

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Ⅲ ページ14

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『…お、オスマンさ、』

「何？Aちゃん。幾ら戦闘専門じゃなくても俺は男やしそれなりに技術はつけている。勝てへんのは分かっとるやろ？」

確かに、彼は高身長で意外に着痩せタイプだと思う。
夏服の時期は腕の予想以上の筋肉を目にして驚いた。

そう言って、手首を片手で拘束してくる。
段々力がこもってきて、顔が歪む。

身を捩っても、腕を抜こうとしても彼は微動だにしない。

そうやって必死に抵抗する私が滑稽なのか、オスマンさんはにやりと笑う。

彼はんふふふ、と堪えきれない笑みを零した。

非常に整った顔が、私の近くまで来る。
状況が状況であるが、照れるものは照れる。
私の頬を、彼の一部のみ長い髪の束が掠める。

確かに、あの時私は襲われかけた。
だが、それは殆ど未遂だった。

別に交わる所までは行っていないし、有能な男性同僚のおかげですぐ助けられた。

彼は深緑の瞳を細めて、片手で拘束していた私の両手を器用にネクタイで結ぶ。

嗚呼、もうされるがままなのだろうか。
足を動かそうとして、体に力が入らないことに気づく。

すると、体に力が入らない私に気づいたのか、また不敵な笑みを浮かべてこっちを見た。

「やっぱ鈍感やなぁ、そんなんでスパイやって襲われへんかホンマ心配」

どうやら薬を入れられた様だ。
力が入らないのなら足掻いたって勝てる訳が無い。
生憎こういう薬に耐性は少しあるものの、きっと見越してしんぺいさんとかが作った強力な物だろうから意味は無いだろう。

「敵国の第二外交官に」

そう言って、彼は拘束されている私の左手の薬指の先を手に取る。
そこに貼ってある絆創膏を、彼は丁寧に剥がす。

『おすまさ、やめ、』

「指先を噛まれて」

噛み跡をゆっくりとなぞる。その指先は人とは思えない程冷えていた。
そして、噛み付く。

『っ、あ』

そう、こんな感じだった。
皮膚が千切れるくらいに噛まれて、舌で舐められて、唾液が指を飲み込んできて、口を離せば銀の糸で繋がって。

「耳を舐められて」

次は耳に彼の舌が侵入してくる。
耳の縁をざらざらとした舌が這いずる。ぞっとし思わず目を瞑る。

『ん、やだ、おすまんさん、ほんと、やめっ』

「やめへん、好きな女の子が他の男に狙われて襲われた言うんに」

そして耳元で囁く。

「上書き、せぇへん訳ないよなぁ？合理的にAにこうやって消毒と男避け出来るし」

彼は私に咲く赤色を知っている。
次手を掛けられるのはこのカッターシャツだ。

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