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『ちょっと渡す物あるから』
待ってて、と言った瞬間に立ち上がった。
すると、視界がぐわりと回った。
歪んだ世界に表情も歪む。くそ、ここで来るか。
ただでさえ話を逸らそうと思ってたのにここで倒れては余計に心配されるのはヤバい!おかんトントンとか心配性マンちゃんやらメンバーが炸裂するぞまじ…!!
それから私の意識が浮き上がってくるまで、30分かかった。
30分後に、私はゆっくりと瞼を上げた。
そこは見慣れた寝室の天井であり、その光景から、もう朝なのかと起き上がろうとした。
＿ん?何かを忘れて…
そこで私はまだ時刻が深夜であることに気がついた。
そして、記憶が戻ってきたのだ。
何故ここにいるのか。
そうだ、うっくんだ。
私がリビングへ向かうと、うっくんはベランダで煙草を吸っていた。
漆黒に近い空には星々が輝き、街の光も失われつつあった。
しかし面している道路には未だ車が通っていた。
『うっくんごめ、寝てたよ。迷惑かけちゃったね』
そうベランダに出ると、またもや視界の揺れに遭遇する。
そのままバランスを崩して倒れるかと思いきや、背中に感じるのは彼の腕。
視界が安定した時には、煙草の大人っぽい苦い香りに身を包んだ彼が目の前にいた。
『ご、ごめっ…っ!?』
謝罪を述べようとすると、ぐっと腕を引かれ、彼の胸元まで行った。
すると何故かそのまま持ち上げられた。
『へあっ!?何してんの鬱っ!!!』
「Aマジで軽すぎやで…はい連行します〜」
そう言ってそのまま洗面所まで運び込まれる。
『降ろしてってば!!』
「降ろしたらまぁたああやって倒れるやろ」
じとりと見つめられ反論を失った私は、彼に連れられるしか無かった。
数年ぶりの体重計に緊張する。
機械音の後に、うっくんはちら、と体重計を見つめて口元を抑えた。
え、なに。その世界が終わった様な顔。
「おま…うせやろ」
身長が160近くあって私の体重は40を切っていた…。
これは不健康不回避ムーブでは?
『い、いやこれは夢だ。早く覚めて!!!』
「お前なぁ、ちゃんと飯食えって俺だけじゃなくってシャオちゃんやらグルちゃんとかトントンとかげどちゃんとか皆に言われとるやろ?」
『すんませっ』
「もー、今日は寝る!!!食材買ってくるから、ほらベッドで寝てな」
ベッドまでまた運ばれて、頭をゆっくり撫でられると、眠気が襲ってきた。
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作者名：眠斗 | 作成日時：2019年6月11日 21時
