２１.社畜さんは眠れない ページ13
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ふぁあ…。
今日何度目か、数えるのさえ億劫になって、欠伸を噛み殺す。
目の前が霞む。
オフィスに響くのはかたかたというタイピング音とコップと机が接触して奏でるコトンという音、後時々誰かが席を立つ音くらいだろうか。
私も眠気を殺す様に若多ちゃんの淹れたブラックコーヒーを啜る。
若干の苦味が下を刺激するが、眠気をかき消すという程では無い。
溜息をついて、資料に占領されデスクの端に追いやられたガムボトルを手に取る。
その黒い物体を口内で噛み砕き、モニターに目をやり、仕事を再開した。
──
殆ど意味をなさないお昼休憩を知らせるチャイムが、オフィス内に響いた。
うちのオフィスは数人が立ち上がり、オフィスを出た。
隣の方だろうか、どこかのオフィスからは人の声が聞こえる。
社員食堂や喫煙室のある方に繋がる唯一の廊下に面しているこのオフィス。まるで嫌味かのようにこの前を楽しそうに会話した人らが歩くのだ。全く。
すると、こと、とコップが置かれた。
そこからは湯気がたっており、黒の水面には疲れた表情の自分が映っていた。
この顔でさえ今時の女の子がやっているパンダやらなんやらになれるあれで撮れば可愛い女の子になれるのだろうか。
そんな事を思いつつ、顔を上げると、そこには若多ちゃんがいた。
話しかけようとすると、無意識に欠伸が出る。くそう。
「先輩が欠伸なんて珍しいですね」
若多ちゃんは冷静に、抑揚のない声で言った。
まあ、確かにそうだ。
私は睡眠時間は短いし、ほぼ徹夜みたいな事もする。
だが酷いのは隈と食欲のムラと体調不良が少々と男がもう1人女を作る時間がある事位で、欠伸は本当に私の体内ではその概念が無いんじゃないだろうかと思う位出ない。
これも慣れかと思ったら怖いのだが、仕事上これは損では無いので良いとしよう。
『んー、歳かなぁ』
「それは無いんじゃないですか?まだ十分どっかの若手俳優捕まえられる位にはお綺麗ですしお若いですよ」
いや、そんな美形で言われても信じられないし!!!!
と思いつつも珈琲を飲む。
熱い液体が喉を通って落ちていく感覚。
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作者名：眠斗 | 作成日時：2019年6月11日 21時
